特集記事【株式会社 zans 水谷 大輔】チャレンジを楽しむ 遊び心を忘れず100店舗100年経営を目指して

株式会社 zans 水谷 大輔 4

プロフィール

株式会社 zans 代表取締役 水谷 大輔

京都府出身

2006年に株式会社 zansを設立。10店舗10業態という目標を掲げ、現在は「思ひ出酒場 えんなすび」「ドラゴン餃子 Ryuo 竜王」「新宿 銀河系 焼き鳥 餃子 はるかとかなた」「艶酒健菜 よござんす」「沖縄居酒屋 パラダヰス」「I Love Gyoza アキバの竜王」「裏アキバ 代表鳥締役 かいかぶり」「高円寺 ど大衆酒屋 大猿 おおざる」の計8店舗を運営している。店名からメニューに至るまで、社長のセンスとアイディアがキラリと光る独創性溢れる業態ばかり。

さらなる社会貢献をするため、100店舗100年経営を主軸に店舗拡大を志し奮闘中の企業である。

■企業

https://zans.jp/

16歳で社会人デビュー

独立を志し、飲食業界にチャレンジ

-どのような青年時代を過ごされましたか?

私は中学校を卒業し高校に進学するのですが、いろいろな事情があり1~2ヶ月で中退しています。16歳で高校を中退してからは、大工見習いとして働きました。押入れを作るのが私の仕事でしたが、結局大工見習いは1年ほどで辞めてしまいます。16歳のガキンチョにはなかなか厳しい世界だったのでしょう。

その後は、父親が共同経営で立ち上げた、プラスチックの加工工場で働くこととなりました。そこではMC旋盤のプログラミングなどを行っていたのですが、それがすごく楽しかったのを覚えています。途中で退職したり戻ったりしたのですが、トータルで5~6年は働きました。

それ以降は、私の放浪癖が始まります(笑)福岡、新潟、長野、沖縄など日本各地で、アルバイトをしながら食いつないでいるような生活です。若い時って、お金は無いけど時間はたくさんあるじゃないですか。いろいろなところに行って、ひとり暮らしをしたり寮生活をしたりする中で、たくさんの人と触れ合うという生活はとても面白く感じました。

私の性格上友達はすぐにできるので、その面での心配はありませんでした。当時の心配事といえば、お金のことだけですよ(笑)

当社の社員の平均年齢は27歳を切るくらいで若い社員も多いのですが、私の若い時の生活と比べると最近の若者は立派だなぁと思います。

目標を見据え逆算して仕事をこなす

27~28歳くらいの時にリゾートバイトで知り合った彼女が東京出身だったため、リゾートバイトの期限が終わるタイミングで一緒に上京することとなります。その彼女が東京の飲食店でアルバイトをしていたので、そのお店に飲みに行くようになり、そこの部長さんや社長さんに「うちで働かない?」と誘われたのがきっかけで飲食業界に入りました。

今まで飲食店でアルバイトをした経験はあったのですが、社員として飲食業界に足を踏み入れたのは、これが初めてです。

その時に「3年間頑張って独立できなければ、飲食業以外のジャンルに挑戦する」と決めていたので、最初の1年間は休み無しで働きました。すると3ヶ月後には店長に抜擢、レコード記録も作り、結局辞める時には6店舗をまとめるマネージャーにまで出世。そして目標の3年を待たずして、2年強で独立できました。

-出世をするために必要なことは何だと思いますか?

私は10代~20代後半に、各地でアルバイトをしていたじゃないですか。だから、新しい人とコミュニケーションを取る能力が人より長けているのだと思います。

しかも、ベクトルが同じ組織の中でチーム作りをするのは、非常に分かりやすく統率も取りやすいですよね。期間のわりにチーム作りがうまくいったというのが、スピード出世した要因でしょう。もともと人が好きというのが根底にありますから、そういったことを意識せず普段から自然にできる性分なのですよ。

また、3年で独立するという目標を決めてから、それを達成するために何が必要かを逆算して仕事をしていました。3年で独立するためには、半年でこれくらいまでして、1年でこれくらいしなければいけないだろうということをしっかりと考えて働いていたので、それを達成するためには休む暇が無かったのです。

上京してから仕事ばかりで全然遊んでいませんから、東京のデートスポットや話題の観光地など未だにまだ行けていない場所がたくさんありますよ。

会社を拡大する前に業態開発能力をつける

株式会社 zans 水谷 大輔

チャレンジを続ける会社でありたい

-独立してどのようなお店を出店したのですか?

1店舗目に出したお店は「艶酒健菜 よござんす」です。大門の裏路地に入ったところにある三軒長屋に出しました。とても渋いでしょう?

内装などもかなりこだわったので、4000万円もかかりました。独立する際、会社から独立支援という形で出資して頂いたので、出店することができたのです。会社からは「そんなにお金を使うのか」とびっくりされましたが(笑)

三軒長屋は3階建てなのですが、1階の1ブースと2階の全4ブース、そして3階に隠し部屋まであるのですよ。とにかくギミックにこだわり、廊下を光らせたりVIPルームを作ったりと、宴会や合コンなどさまざまな用途で使って頂けるお店になりました。

このあたりは人通りも少ないですし、こんなところにお店を作るなんてきっと私たちだけでしょう。しかし、内見をした際に長屋の裏の貯金塚というものを見つけます。その貯金塚には武士小路実篤(むしゃのこうじさねあつ)の詞が書かれていて、それを読んだ時にここで店をやろうと決めました。

独創性のある業態を開発

現在、8店舗展開していますがそれぞれ違う業態です。その中で多少似ているものもありますが、屋号は全て違います。

基本は、私が作りたいと思う業態を作るということを大切にして業態開発をしてきました。私は自分のお店によく飲みに行くのですが、その時にいろいろな業態がある方が楽しいじゃないですか。

というのは冗談で、今のうちに業態開発能力をつけておく必要があると考えています。店舗が増えてある程度会社が大きくなると、なかなかイチからじっくり作り込むのは難しくなるでしょう。基本がない今のうちに、10店舗10業態を実現させようと思っています。

-業態が多いと管理が大変ではないですか?

もちろん、難しいことは多いです。業態が多いと仕入れが安くなりませんし、人事異動もしにくいです。しかし、利便性を追求して同じような業態ばかり増やしたら、つまらない居酒屋になってしまうと思いませんか?

同じ業態の店舗を増やせば、生みの苦労が少ないですからストレスも減るでしょう。また、新規拡大する際も、ノウハウが確立されていますからスムーズにいくはずです。しかし、当社は飲食を通じてチャレンジを続けていく組織でありたいと思っています。

私は、チャレンジをすることでお客さんやスタッフ、地域に対して貢献していかないとつまらないという考えです。

当社の場合、道徳概念と商売観に加えて、娯楽も加味しています。つまり同じ業態を作らないというのは、娯楽的要素が強いのです。立ち上げには苦労しますが、「チャレンジを楽しもう」ということ。

ノウハウが3~4割しかないなか、店舗を生み出すのは当然苦労が絶えません。その経験によって、業態開発能力は鍛えられます。

生み出されたばかりの業態は、完成度でいうと、まだの伸びしろがあるものも多いでしょう。しかし居酒屋って、うまく回っていない大衆居酒屋こそ応援したくなることもあるじゃないですか。お客さんは応援団的要素も持っていますから、そこに救われている面もありますね。

-業態はどのように決めているのでしょうか?

我々の市場調査は、飲みに行くだけ。おかしな会社だと思いますよ。しかし、自分の感覚的な要素や感性を信じているのです。

私は、物件を探す時に、先に業態を決めることはしません。物件を見に行って「ここはこんな業態が合うな」という感じで後から決めます。不思議なことで、一緒に見に行った社員と意見が合うのですよ。例えば、沖縄居酒屋 パラダヰスは典型的な例で、2~3人で内見したのですが、「ここは沖縄料理じゃない?」という私の意見に満場一致でそれに決まりました。

また各店、いろいろと面白いアイディアがあり、グラスワイン100種類を500円で提供、泡盛100種類、餃子50種類、ハイボール100種類とかメニューに関してはかなり創作しています。

こういったちょっと変わった策を講じているお店は、ご多分に漏れず立ち上げが悪くて「何か思いきったことをやろう」という流れなのですよ。初めから業績がよければそういったことはしなくてもいいわけですから、例えば「裏アキバ 代表鳥締役 かいかぶり」は「意外と普通だよね」ってよくいわれるのですが、このお店は最初から調子が良かったからにすぎません。

そういう文化が社員に浸透しているので、ちょっと苦戦をした際にも、ワイン100種類を500円で提供することに「できない理由はない」という考えになるのです。

また、マネージャーや店長によって色が違うので、料理や内装をおしゃれにキメる人もいれば、ちょっとダサくする人もいます。しかし、ダサいお店も大切ですよね。

これからは、焼酎や日本酒が充実したお店を作りたいですし、焼肉、本格イタリアン、寿司居酒屋、立ち飲みなど、まだまだやりたい業態がたくさんあります。ひとつの目安としては、立ち上げの費用が2500万円ということです。

自分がしてほしいことをお客様にも提供する

マニュアルはスタッフが話し合って作り上げられる

-顧客満足度向上のための取り組みを教えてください。

いろいろな考えがあるとは思いますが、私は「自分のしてほしいことをお客さんにもする」というのが一番いいと思っています。誰でも幼いころ母親に「自分がやられて嫌なことは人にするな」と言われましたよね。単純に、それの逆のことをしてほしいのです。

お客さんが、飲食店に求める原点はなんだと思いますか?「家で作るのが面倒くさいから外でご飯を食べよう」とか「俺とお前の中間地点だからちょっとここでご飯食べながら話そうよ」とか、そういうシンプルなものですよね。別にスタッフがホストの様にバンバン話しかけるのが正解ではないと思うので、私はスタッフに「お客さんの求めている原点を自分で考えなさい」といつも言っています。

そんななかスタッフ5人ぐらい集まって話せば、自然にマニュアルができるでしょう。会社主体でマニュアル化をすると、それはスタッフの本心ではありません。本当にスタッフがやりたい仕事や接客をすることが大切なので「スタッフが自ら考え対応する」ということに勝るものはありません。

ただ、自分がこうしてあげたいと思っても、お客さんにとってはベストではないこともあります。しかしそれも勉強。失敗すれば謝ればいいのです。

もし料理の提供が遅く怒られてしまっても、誠意ある対応すれば逆に常連さんになってくれることもあります。

大企業の場合、こういった柔軟な対応は難しいでしょう。これができるのは、当社のように若い会社ならではのこと。

当社は1万円、2万円もらうレストランをやっているわけではないですし、時にはフレンドリーに話すこともあります。そういったことを繰り返し、お客さんの信頼を高めるというシンプルなことを継続的にやればいいのです。

顧客は人につく

気の利いた店員を作るというのは、マニュアルには落とせません。しかし、社員、アルバイトを問わず、5人に1人か10人に1人は、スター性のあるスタッフが出てくるのですよ。

例えば、東京に3日しか滞在しない方が、3日連続でお店に足を運んでくれたことがありました。それはおそらく、2日目の感動が1日目に勝ったからです。だって2日目の感動が1日目より薄れたら、3日目は別の飲食店に行きますよね。そういったサービスができるスタッフが実際にいるのです。

やはりお店にお客さんがつくのではなく、スタッフにお客さんがつくと思っているから、当社は超属人的産業だなぁと思います。

逆に大手の企業は、属人的な経営を嫌いますよね。パッケージに落とし込み、マニュアル化した方が効率的です。弊社でもそういう考え方もありますが、平均年齢の低い、若い会社ですし店とともに人が成長する可能性にかけています。

女性が活躍する企業

人の意見を否定しない

-従業員満足度を上げるための取り組みを教えてください。 

結局当社で働いている人は、みんな人好きです。「飲みに行くぞー」と誘うと、5人でも10人でも、すぐ来てくれるから本当にありがたいと思います。

それもやはり、上司が部下を否定しないからでしょう。下の意見を聞く体制になっていないと、仕事がつまらないと感じる人が出てくるので、そこは非常に気をつけないといけないことで、当社が大切にしている理念のひとつ。

そのなかで水谷大輔という人がいてその組織があって、その中で自分のやりたいことを見つけられるかどうかではないでしょうか。

もちろんダメなことはダメだと言いますが、正しいことの芽は摘まないようにしています。そうすることで、組織の内部活性が促進されるでしょう。

私は、日頃から頻繁にお店に足を運びますし、いろいろなスタッフと飲みに行って話をしたりしていますから、そのコミュニティの中でちょっとでも暗い顔をしていたら「元気がないなぁ」「悩みがあるのかな」とすぐに気がつくことができます。

そうするとほっとけないのですよね。当社の社員は、全員金八先生ですから(笑)店長やマネージャーが、お兄さんお姉さんとなって、下の社員を引っ張っていってくれています。

マネージャーが3人いるのですが、そのうちの2人は女性で、店長も1人女性が務めています。比較的女性が活躍している現場であるということも、従業員満足に貢献しているのではないでしょうか。男性と女性では観点が違うので、やはり組織は父親だけじゃなく母親的存在も必要です。スタッフの変化や悩みも女性の方が早く気づくことができたりしますから、そういう面では勉強になります。

スタッフを絶対的に信頼している

スタッフが楽しくやってくれているお陰で、ありがたいことに一度入社するとすぐに辞めるというような子は少ないですし、採用にもそれほど困っていません。

アルバイトから昇格したり、社員から紹介してもらったり、ネットで私が喋っている動画を見て感銘を受けて入社してくれたりと、来年度の新入社員も3人内定を決めています。

社宅取得システムがあるので、福島や熊本など県外からも結構入社してくれています。先に部屋を借りてしまうので会社としてはリスクが高いですが、今まで裏切られたことはないですね。

まるまる社員を信頼する会社で人が悪いことをするなんて思っていないから、そうすると逆に簡単に裏切れないでしょう。

いい会社かどうかは社員が決めることなので私には分かりませんが、他社さんと比べると離職率は低いと思います。

また、店舗の運営権も100%マネージャーや店長に委ねています。ですから、店舗の今日のおすすめは何か知らないですし、メニューチェンジも事後報告です。

それで、私がお店に食べに行って「これ美味しいね!」「良くなったね!」とお客さん目線で変化が分かるという感じ。私は「うまい、まずい、高い、安い」しかいいません。もちろん、細々したことをマネージャーや店長がやってくれているからこそなのですが。

それにより主体性が育ち、スタッフの成長にも繋がっていくのでしょう。

100店舗100年経営実現のために

遊び心を忘れない

-今後の展望を教えてください。

100店舗100年経営に向けて、2020年も新たに数店舗オープンさせたいと思います。直近にオープンした店舗は地下のお店なので、次は1階の路面店が希望です。まだ業態は決まっていないのですが、ど真ん中ストレートのTHE大衆居酒屋みたいなのもいいし、尖った焼肉屋もやりたいですね。

今考えていることが具現化するかは別として、アイディアはたくさんあります。このアイディアが浮かぶのは、誰かとお酒を飲んだり、インタビューを受けたりしている時なので、私の場合、1人の時はなかなかアイディアが出てきません。最近は群れる力を否定する人も多いですが、私は多分に影響があると思います。

100店舗100年経営を実現するために、私がすることといえば人集めですね。まだ言えないのですが、スタッフの求人に関しては面白いことも考えているので楽しみにしてください。

そしてこれからも、社会的道徳意識と関西商人の商売観と遊び心を持ったまま会社も組織も大きくしていきたいなと思っています。

ー本日はありがとうございました。

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