特集記事【株式会社ドラムカンパニー 竹下 大介】人生は実験の連続。元ラッパーが日本最大級の立ち飲みフランチャイズを軌道に乗せるまで

 

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プロフィール

株式会社ドラムカンパニー 代表取締役 竹下 大介

1978年生まれ 千葉県出身

カフェバー「バンブーカフェ」20店舗の店舗経営を経て、立ち飲み居酒屋「ドラム缶」を開店。1号店オープンから半年で直営店舗を都内に複数設置し、のちフランチャイズ化。

現在は社員数は自分を含めわずか3名。直営店舗を持たず、「のれん分け」店舗を全国に30店舗以上有する、日本第2位の立ち飲み屋フランチャイズとなっている。

■企業HP

http://drum-company.net/

音楽活動から転身。カフェバーを20店舗経営

ー現在、「ドラム缶」に直営店はありますか?

ありません。今(2019年9月現在)は32店舗ほど全国で展開しているのですが、その全てが「のれん分け」、いわゆるフランチャイズ店です。

ただ、数十の直営店舗を持っていた経験がないわけではありません。「ドラム缶」を立ち上げる前、カフェバーを20店舗ほど直営していた時期がありましたが、これは全て売ってしまいました。

 

ー短期間ですぐに売れてしまうものなんですね。

もちろん、売れずに潰してしまった店舗もありますが、多くはすぐに売れていきました。というよりかは、カフェバーを「独立させた」といった方が良いかもしれません。基本的にバーの運営を任されている人は独立したいという気概が強くて、話を持ちかけるとすんなりとまとまることがほとんどでした。

バーは常連のお客さんがつきやすい業態なので、独立しても客足が落ち込んだりすることは少ないものです。これはヘアサロンのようなお店にも当てはまりますが、バーはバーとしてそのまま売ってしまった方が健全ですね。

 

ーカフェバーの前は何をされていたんですか?

色々していましたね。高校を卒業してから弟と一緒にバンド活動をしていたんですが、歌が上手くないのでラップに転向して、音楽に精を出していました。僕は大学に行ってなかったんですが、中高の同級生が大学を卒業してから就職し始めて、「そろそろ定職に就かなきゃな」という思いもあり、地元の不動産屋で働き始めるようになりました。

ただ、不動産屋で働きながらもラップはずっと続けていて、少ししてからメジャーデビューの話をいただくことになりました。ソロではなくラップグループでのデビューでグループ名は「暴欲団」です。(笑)

そこからはまたしばらく音楽活動に身を入れていました。

6、7年の間活動は続けていたんですが、ラップ人気が低迷しだしてしまったのと、いつも面倒を見てくれていたマネージャーが交通事故で亡くなってしまったことをきっかけに、グループは自然消滅していってしまいました。

この頃からまた不動産屋の仕事に戻りながらも、頻繁に東南アジアへ行って服を買い付けてネットで売るようになっていきました。いわゆる「せどり」ですね。これが結構良い商売になったんですが、はたから見れば僕は定職につかない「怪しいやつ」だったと思います(笑)。

そんな後ろめたい気持ちもあって、28歳の時に元グループメンバーと一緒にバーを立ち上げることになりました。これが思いのほか繁盛して、今でもこの店は独立して残っていたりします。

実はこのお店は暴欲団の他のメンバーが出資してくれて開店したんですが、やはり自分じゃない人の資本でやるとなるとイザコザも多いし、資本を出す側になった強さをこの時に実感しました。このバーもどんどん店舗を増やしていこうという話だったんですが、ペースの遅さもあって、自分でカフェバーをやってしまおうということで32歳の時に独立・開業に至りました。

カフェバーが大きくなるにつれて人(従業員)の問題で苦労しました。バーなので従業員が1人辞めてしまうとお客様がごそっと居なくなったりするんですよね。そんなこともあり、事業転換も考えてカフェバーを売却することにしました。

 

ホームセンターで見つけたドラム缶。理由は安いから。

ーカフェバーからどうしてドラム缶になったんですか?

カフェバーを閉めて新しいお店をやろうと思い、1年くらい色々な業態を探していました。その時ちょうど立ち飲みブームが来つつある頃だったので、これはいけるなと思って上手なやり方を探していました。

立ち飲み屋って結構すごくて、お酒の箱をひっくり返してテーブルとして使っていたところもあるくらいです。これでお客さんが入るというのはかなり魅力的で、というのも飲食店のイスやテーブルって、そもそもかなりいい値段がするんです。安いものでも一式揃えようとすれば5,6万はかかるので、決して無視できない金額です。

一方、立ち飲み居酒屋だとイス代もかからなくなるので、実質テーブル代だけで済むようになります。ただテーブル代も綺麗なのを揃えるとそれなりの値段になってしまうので、何か良いものはないかと思ってホームセンターに行ったんです。するとドラム缶が置いてあったのを見つけて、これは使えるぞと思って導入したのが、立ち飲み居酒屋「ドラム缶」の始まりです。

 

ードラム缶を立ち飲みに使えると思った理由を教えてください。

ドラム缶がいいなと思ったのは、単純に安かったからですね。ドラム缶って新品で買っても一缶5,000円くらいなので、普通にテーブルを買うよりもはるかに安上がりなんです。

もともと新しいお店を開くにあたってやろうと考えていたことに、「初期投資を極限まで抑える」というものがあったんです。いい値段のするイスやテーブルにお金を出したくなかったのもこういった理由があって、このコスト削減の取り組みは、自分の中では一つの社会実験だったかもしれません。

「ドラム缶」の一号店は茅場町にあるお店なんですが、これはかつて僕が経営してたバーの居抜き物件です。いわゆる自社居抜き物件なので改装にもほとんどお金はかかっていないし、搬入をするにしてもその時あったイスやテーブルを処分して、ドラム缶を並べるだけなので、設備費用はおさえられています。もちろん、看板も手作りでした。あとは飲み物を用意して、短冊でメニューを吊るして、お客さんを待つだけです。

これでお客さんが入るのだろうかと、初めは自分でも半信半疑だったんですが、いざオープンしてみると想像を超える集客になりました。

実はもう一つ自分なりに試してみようと思っていた施策を導入していて、バー時代に売り上げが芳しくなかった店舗のスタッフに、「ドラム缶」一号店を任せてみたんです。自分でもかなり実験的だなと思ったんですが、どうやら功を奏したようで、なんでもやってみるものだなという発見にもつながりました。

で、これはいけるなと思って、すぐに銀座に2号店をオープンさせて、小岩、神田にもすぐに出店させていきました。

 

「ドラム缶」流、顧客満足度の高め方

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ーネットの口コミでも話題になっていますね。

ありがとうございます。とにかく「ドラム缶」の強みは安さで、実際「安さ日本一」を目標にしているということもあります。

料理は基本的にレンジとフライヤーのみで完結するようなメニューになっていて、設備投資を抑えています。包丁も豆腐を半丁に切る時くらいしか使わないのですが、そもそもおひとりさまメニューを想定して用意しているので、一皿の量が少ないんです。安価に料理を提供できるのは、そういった盛り付けに配慮していることも大きかったりします。

飲み物もチューハイが150円くらいと、自販機やスーパーで買うよりも安かったりすることも珍しくありません。ただ飲み物については色々とバリエーションの拡充を図っているところで、ポン酢サワーやガリチューハイなど、試行錯誤しながら進めています。新メニューの開発は僕が店舗に提案することもあるのですが、FC店舗から僕へ情報共有してくれたり、他の店にも出すよう提案してくれることもあります。

 

ー顧客満足度を高めるため、独自に行っていることはありますか。

もともと僕がバー経営者で、接客が好きだったということもあるので、人と人とが出会うような場、パブリックな環境を提供したいというものがありました。

店に来られるお客さんも30~40代男性といったサラリーマンはもちろんなのですが、立地によっては20代の学生が集ったり、高齢のお客さんが早い時間に飲みに来るといったこともあります。メニューはアラカルトで、かつ支払いはキャッシュオン方式を採用しているので、グループのお客さんでも割り勘が簡単なのは大きいと思います。

若い女性の方もよく来られているので、お客さんは老若男女を問わないと思います。銀座のお店などは男女の出会いの場としてメディアに取り上げられていたこともあったほどなので、やはり他の立ち飲み居酒屋とは一味違った価値を提供できているのではないでしょうか。

 

あとこれは自分では気づかなかったのですが、ドラム缶の形状が居心地の良さを生み出していると他の経営者さんから声をいただいたことがあります。一般的にテーブルというのは角が4つあるので、お客さんは一卓あたり4名のグループまでしか集客できません。一方でドラム缶は面が円形なので、入ろうと思えば卓が一杯になるまで、5人でも6人でも詰めることができます。ドラム缶が人との出会いを促しているというわけですね。

そんなわけでうちのお店はいつも満員電車のように混み合っているんですが、お客さんは店を出られた後も満員電車に揺られて帰っていくわけです。ずっと窮屈な場にいて苦しくないんだろうかと思うこともあるんですが、やっぱり人は人のいる場所に引き寄せられてしまうのかもしれません。

 

たった社員3名でブランド成立。「ドラム缶」を全国へ。

ー本社の規模はどれくらいですか。

規模としてはとても小さいと思います。社員は僕も含めて3名で、一人は弟、もう一人は僕にビジネスを教えて欲しいということで来てくれている人なんですが、実際、業務そのものは二人でも十分にまかなえるほどです。オフィスもシェアスペースを借りているだけなので、本当に身軽です。

うちは直営店を持っておらず、現在は「ドラム缶」ブランドのライセンス管理を行うのが日々の業務になっています。それでも最初の4店舗は全て直営でやっていたので、その頃が一番苦しかったかもしれません。ただ、その頃からフランチャイズ化の計画は持っていました。

以前のカフェバー経営の中で、人を育てることがかなりの負担になるなということを覚えたんです。優秀な人ほど先に辞めていってしまうので、それなら最初からフランチャイズにして、優秀な人に店を開業する機会を提供する方が良いだろうと思って。それでもいきなりフランチャイズ化しても、「なんだこの店は」と思われて誰も近寄ってくれないので、勢いのあるうちに店舗を増やして、ブランドを確立させようというのが狙いでした。

 

あとは、独立開業を支援するサービスに広告を出稿したこともあります。これは先払いで利用するサービスで、しっかり活用しようとすれば店舗を一つ開業できてしまうほどの資金が必要になるんですが、思い切って使ってみると、少しづつ効果が出るようになりました。

今思うと、それが分岐点だったかもしれません。今では1日に一件は問い合わせが入るようになって、毎月5件ほど面談をしています。関東県外でも出店の問い合わせが増えてきていて、どういう風に全国展開していくかというのが今の課題でもあります。何しろ地方の店舗は常にを見守っておくことができないので、先行き不透明な案件には慎重になってしまいますね。

けれど自分が思ってもなかった成功もあって、例えば山形の温泉街に出店した時は驚きました。最初は寂れた温泉街に人が来るのだろうかと思っていたんですが、周りのお店の単価が高いこともあって、単価の安いうちの店に多くの人が集まっているみたいです。

温泉客や地元の人、温泉街で働く人もそうなんですが、誰も予想していなかったのは、近所のサッカースタジアムからのお客さんです。試合終わりには両チームのサポーターの人たちが集まってくれているようで、良い交流の場として活躍しているようです。

 

人を育てる時代から、個人が輝く時代へ

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ー店の評判は総じて高いように思うのですが、研修はどのように行なっているのでしょうか。

研修は実にシンプルで、簡単に料理や飲み物の提供の仕方を教えるだけのものです。あとは挨拶や愛想ですが、このあたりは店やその人の個性が出やすいところではあります。

本社側からフランチャイズ店の方へあれこれと指示をすることはほとんどありません。そもそも面談の時点でかなりのれん分けをする相手を選んでいるということもあり、しっかりと自分で責任を取って、店の看板を出すことのできる人がその店の運営に当たってくれるので、自分の管理の及ばないところでも安心して任せられるということもあります。

もちろん仕入れ方法やその他の運営ノウハウ、立地についてのアドバイスはしますが、そこでお金を取るようなこともしていません。

 

ー本社の収益はどこから得ているのでしょうか。

会社としては、基本的に「ドラム缶」の看板にかかるライセンス料を徴収することで運営されています。ライセンス料は月3万円ですが、店の集客を考えると非常にリーズナブルな料金だと思っています。仕入れから中抜きを行ったりもないので、その点に関しては自信がありますね。

一般的なフランチャイズと違って、うちの場合は本当に名前を貸すだけに止まっています。それだけ自己責任でやってほしいという思いも反面、実際に店舗を運営する人にとっては独立の自由を十分に活用してもらうチャンスでもあると思います。

優秀な人ほど独立を望みますが、ドラムカンパニーとしてはそういう人の手助けをしたいという思いもあります。今やSNSでの個人的な情報発信が大きな広告塔にもなる時代ですから、個人が輝ける時代を積極的に作っていきたいですね。

 

目標は400店舗出店。でも一歩一歩確実に

ー今後の展望について教えてください。

一応の目標として、47都道府県全てに出店することと、400店舗出店を達成することを考えています。前者の目標は200店舗もあれば達成できると思います。後者についても、都内だけで200店舗出店できるのではと考えているので、無理な数字ではないと思います。

ただ、初期の頃のように無理に店舗数を増やしていくと、途中でコケてしまうリスクも十分にあります。そういった事例は過去にも別のお店で起きていたことですから、「ドラム缶」はそうならないよう、ブランド管理にも細心の注意を払っていきたいですね。

出店ペースについては色々と考えていることがあって、ここはひとつの課題だと感じています。好立地での出店も避けたいと考えていて、これは家賃の問題があるからです。法人の方も時折相談に来られますが、好立地での出店を望んでおられることが多く、こういう時は慎重になりますね。急成長は避けつつ、地価の安いところから着実に押さえていくのが、「ドラム缶」のやり方だと思っています。

 

ー本日はありがとうございました。

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