特集記事【ジローレストランシステム株式会社 佐藤 治彦】社員の意見を汲み取り反映させる 風通しの良い会社に。 

ジローレストランシステム株式会社 代表取締役社長 佐藤 治彦

プロフィール

ジローレストランシステム株式会社 代表取締役社長 佐藤 治彦(さとう はるひこ)

1961年生まれ 大分県出身

明治大学農学部を卒業後、小田急電鉄に入社。その後、グループ会社であるジローレストランシステム株式会社に出向。現在は代表取締役社長を務める。
現在店舗数は100店舗、工場を合わせると101店舗になる。(2019年12月末時点)

■企業HP

https://www.giraud.co.jp

幼少期の将来の夢は教員

両親の希望は教員か医者か弁護士

-どのようなお子さんだったのですか?

私は大分県の大野郡三重町という田舎で育ちました。家の近くの川で泳いだり山で虫取りをしたりと外で遊ぶのが大好きな子供でした。

母が看護師だったので、食事は兄弟で当番制にしていました。母が休みの日にも私は積極的に食事の手伝いをしていましたね。小学生のころから食に興味があり料理が好きだったからです。

 

-将来の夢はありましたか?

独立をしたいとか有名な社長になりたいという気持ちは全くなかったです。父が学校関係の仕事だったことや、親戚に教員や弁護士が多いこと、理系が得意だったことで、両親からは教員か医者か弁護士を勧められていたこともあり、自分は教員になるのかなぁと考えていました。

 

大学4年生を転機に、将来の夢がガラリと変わる

明治大学の農学部を受験

-高校を卒業後はどこに進学したのですか?

地元に国立大学があり両親としてはそこが希望だったのですが、私は家を出たいという気持ちがあったので、宮崎県の宮崎大学と東京の明治大学を併願し受験をしました。

結局、明治大学農学部の合格通知が先に届き、そちらが第一志望だったためすぐに飛行機を取り下宿先を探しました。農学部を選んだ理由はやはり、食に興味があり食べることが大好きだったからです。

 

教育実習で教員の内情を知る

-この時はまだ教員になるつもりだったのですか?

そうですね。明治大学の農学部では理科と農業の教員免許を取ることができます。実際に4年生の時には、自分の出身高に教育実習に行きました。私が高校時代に教わっていた先生もたくさんいらっしゃいましたよ。歓迎会をしてもらった時、教員同士の付き合いの煩わしさを目の当たりにしてショックを受け、教員という仕事に魅力を感じなくなってしまいました。

両親に教師は諦めることをすぐに相談すると、また教員になりたければ29歳まで採用試験を受けることができるので、とりあえずサラリーマンをすることで話がまとまりました。

 

試しに受けた小田急電鉄で内定をもらう

-就職活動はスムーズでしたか?

幼い頃からずっと飲食が好きだったので、カゴメさんや味の素さん、キッコーマンさんなどの食品メーカーに就職できたらいいなと考えていました。そんな時、たまたま大学の就職課に行くと「今年は珍しく小田急電鉄から求人が来ている」と言われました。今はもう無いのですが、当時は小田急電鉄の傘下に花屋がありまして、園芸関係の総合職での求人でした。

元々大学では園芸学第二というゼミに入っていて、私は野菜の勉強を専攻していましたが、同じゼミ内に花部門もあったので園芸関係を知らないわけではありません。

試しに面接を受けてみると、採用されることになったのです。正直面接に手応えを感じなかったので、なぜ受かったのかは今でも分かりません。初めに面接を受けた会社で内定を頂いたので就職活動は苦労しませんでした。

 

ジローレストランシステムに出向できるよう猛アピール

-入社してどのような仕事を任されましたか?

新入社員は入社して半年、駅員の研修を受けます。私が配属された小田原駅は、当時まだ自動改札がなかったので、手で切符を切っていました。

その後実際に花屋の現場に入り、花束作りや仕入れを覚えていきました。トータルで16年ほど勤務し、この間に花の卸売市場にも足を運んだので、“商品の値段の付けられ方”を学ぶ良い機会になりました。

その後、小田急電鉄に復職し、グループ各社の営業を支援する「営業推進部」への辞令が出ます。営業の支援がメインなので、自ら仕事を取りに行く機会が少なくなりました。色々な人とお付き合いができることは楽しかったのですが、より達成感が味わえる仕事がしたいと考えていました。

この時に、やはり飲食業に携わりたいという気持ちが大きかったので当時のジローレストランシステムの社長に「そちらに行きたいです!」とメールを送りました。アクションを起こしたのは営業推進部に入って1年ほど経ってからでしょうか。新しいお店がオープンしたと聞けば足を運び、自分なりにレポートをまとめて送っていました。それから2年ほど経ち、当時の社長の計らいで念願叶ってジローレストランシステムに出向が決まったのです。

 

42歳で念願の飲食業界へ

ジローレストランシステム株式会社 代表取締役社長 佐藤 治彦2

花屋での経験が活きた仕入れ

-初めての飲食業界はいかがでしたか?

お茶の水の店舗に配属されたのですが、現場からやりたいと自ら打診し4か月間現場でサービスを学ぶこととなりました。次長と言う立場の人間が現場に立つことは稀なのでかなり異例なことだったと思います。

4か月ほど経って、本部に戻り仕入部に配属となりました。ここで活きたのが、花屋時代に学んだ商品の値段が付く仕組みです。この頃から日本農業新聞を取ったりワインを勉強したりと、飲食の勉強を本格的に始めました。

実際、仕入れ業者と値段交渉を続けたことで、四半期にすると何千万という単位の仕入れ値を下げることができました。会社に対して私なりの利益貢献ができたと思います。仕入部にはトータルで4年ほど在籍しました。

 

店舗拡大のために奔走する日々

-その後はどのような仕事をされたのですか?

営業部長となり、イタリアンだけでなくフードコートなど様々な業態を30店舗ほど任されました。各店舗の営業利益を確保するため、従業員の人材育成や商品力の向上、就業環境の改善に取り組みました。初めて立ち上げから携わった「テキサスキングステーキ越谷レイクタウン店(現在は閉店)」は中でも記憶に残っています。商品開発に始まり、オープンまでのすべてを任せていただいたので経験そのものがその後の血肉となりました。

一番思い入れがあるのが、丸の内にあるカリフォルニアイタリアンの店「A16 TOKYO(エーシックスティーン トウキョウ)」です。当時の社長の夢でもあった、海外の人気レストランを日本に誘致する事業のひとつを任せていただいたので嬉しさもひとしおでした。本店があるサンフランシスコと丸の内を行き来する中で、オープンまでにはトラブルに見舞われることもありましたが、その甲斐あってか今も当社を牽引する旗艦店として順調に営業しています。

 

他人が決めた肩書には魅力を感じない

出世には興味がない

-順調に出世をされていますがもともと出世欲があったのですか?

実は出世欲というものは全くありませんでした。同期と飲み会をすると「これになりたい」「あれになりたい」といろいろな肩書が出てくるのですが、私は魅力を感じないのです。

私が今社長を務めているのは辞令があってのことです。かつては、会社の上層部が下を動かす風潮が根強かったこともあり、変な話、上司に取り入ったり言うことに従ったりしていれば出世できたかもしれません。社会人経験の中で幾度かそのような側面を目にしたことで、いつしか人の評価をあてにしなくなりました。

私も今でこそひとつの会社の社長ですが、小田急電鉄の本社に戻れと辞令が出れば部長です。肩書きそのものに意味はありません。

出世を目的とするのでなく、与えられた社長という職務とどう向き合うかが肝要です。私自身、日々反省を繰り返しながら組織をより良く変えていける人間になりたいと思っています。

 

接客と食材の質に持つ並々ならぬこだわり

強みは味のクオリティの高さ

-顧客満足や顧客体験で意識されていることはありますか?

食材の品質にはかなりこだわっています。お客様は安価であることを最重視しているわけでなく、価格と味のバランスが良い商品に魅力を感じてくださいます。このバランスは数値化できないのでなかなか難しいですが、食材選びは妥協しません。そのため、調理指導員など、当社の基準を熟知している人間がどのような食材を使うかで判断するようにしています。

また、味のクオリティの高さは当社の一番の強みですのでしっかりと維持したいですね。例えば、お客様から毎年好評いただくクリスマスケーキも、ほとんど機械を使わずに手作りにこだわっていますし、料理は店舖で一から仕込んでいます。

 

商品の見た目や見せ方にもこだわる

-商品開発でこだわっていることはありますか?

最終的に、私が商品を確認する「社長プレゼン」を設けています。まず営業部内でプレゼンが行われ、複数の調理指導員や部長の意見が反映された商品を、営業本部長と私にプレゼンテーションしてもらいます。業態にもよりますが、社長プレゼンの頻度は基本的に春夏秋冬の年4回です。

社長プレゼンがない業態は、写真で新商品を確認します。経験豊富な調理指導員レベルの人間が企画しているものなので味に関しての心配はありませんが、商品の見せ方やソースのかけ方など主に見た目の指導をしています。

 

従業員の見た目にはこだわらない

新人教育の難しさ

-人を育てるのは大変な部分ですよね。

そうですね。一人一人の資質に左右される部分が大きいので、接客指導はとても難しいです。接客の質を底上げするために、新入社員や新規アルバイトの教育担当者が、数時間かけて導入教育をしたり、実際に店舗を回って一人一人に指導をしたりしています。

当社は、「マニュアルのない接客」を掲げています。マニュアルに頼らない分、必要最低限のルールは指導する必要があるでしょう。

店舗を巡回していると、やはり接客業が好きな人は成長が早く感じます。マネージャークラスになると、接客業が大好きな人間ばかりです。

 

-従業員指導で意識されていることはありますか?

稀に、お客様から従業員の見た目についてご意見を頂くこともあるのですが、私は髪型などの見た目にはあまりこだわっていません。

パンケーキを売っている店では、アロハシャツやTシャツに巻きスカートというユニフォームで営業しています。そこに真っ白な髪色をした従業員がいたのですが、店舖の雰囲気にマッチして違和感がなかったので問題ないと思いました。

出張でサンフランシスコに行った時、とある飲食店にとてもかっこいい店員さんがいました。その方は帽子を斜めにかぶって自由なスタイルでサービスをしていましたが所作が美しくとても魅力的でした。お客様にも人気の店員さんでしたね。従業員のポテンシャルを引き出す意味で自由と個性を尊重しています。

見た目の画一化を図るのでなく、従業員にはむしろ「もうちょっとおしゃれにした方がいいんじゃない?」といったアドバイスをしているくらいです。

 

従業員の声を反映した組織に

定期的に談話会を開催

-従業員の満足度を上げるための工夫を教えてください。

私は、従業員の声を組織に反映していきたいと考えています。そのため、一昨年から“談話会”を始めました。何かというと、店舗のマネージャーや調理指導員を4人集めて、お茶やケーキを食べながら雑談するのです。月2回の開催で、1人あたり年に1回は参加してもらう頻度です。談話会で上がった意見がすぐに活かせるものだったら即時反映しています。

 

服装の自由化を実現

-例えばどのようなことを反映されましたか?

これまでの就業規則では、会社と店の行き帰りにスーツを指定していました。談話会で、スーツではなく私服にしてくれないかという声が上がり、他の従業員にも意見を聞いたところ9割以上の従業員が賛成だったため私服OKにしました。私自身、取引先への挨拶や大切な節目の行事以外はセーターやTシャツを着て出社しています。私が率先して動かないと従業員が変えづらいですからね。

他には、年中無休で営業していた店舗を対象に、年2回の定休日を設定しました。成人式の翌日と5月の連休明けが定休日となります。今後、新店をオープンする際は週休1日制であってもいいのではないかと考えています。

 

昇格の基準を明確にする

さらには、試験制度を新たに導入し昇格基準を明確にしました。これまでは人事考課が上司の判断に寄るところが大きかったのですが、より公平性を期すため階層ごとに試験制度を導入しました。

例えば店長試験の場合、試験に受かれば店長になる資格がもらえます。その後、新しい店舗のオープンなどがあった際に、店長になるチャンスがあるわけです。

昇格基準が明確となったことで、従業員の目的意識が向上するのではないかと考えています。飲食業界はほかの業界と比べても圧倒的な売り手市場ですので、従業員のニーズに合わせた柔軟な対応が必要です。

 

限られた空間で利益を生む

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経費コントロールが今後のキーポイント

-今後の課題を教えてください。

経費の中でも、特に割合が大きいのが人件費です。毎年4月に新入社員が入社し、中でも抜きんでた従業員が1年経ってやっと店舗業務を一通り覚えます。社員教育にも人件費がかかるわけですから、一人前になるまでの時間をどうやって短縮するかが今後の課題です。

一方で、合理化のためのセントラルキッチンなどは想定していません。人件費の削減だけにこだわると営業方針との矛盾が出る分、新たな収益源の模索なども含めて総合的に考えていかないと難しいと思っています。

 

新たなビジネスを試行錯誤

-利益を得るために工夫していることはありますか?

2018年よりイタリアからワインの直輸入を始めました。元々は、経営理念でもある食文化の紹介という観点から、品質だけでなく生産者の想いに共感した商品をお客様にご提供したいという思いから現地に赴き、手探りで始めた事業です。今では、ワインだけでなくイタリアでも希少な“ピエンノロトマト”や生ハム、パンチェッタなどの食材も扱うようになりました。ワインは店舗で提供するだけでなく、2019年にはネットショップをオープンしたことでどなたにもお楽しみいただけるようになりましたし、小田急グループ各社への卸も始めました。

グループでは定期的に社長会があるのですが、会場内に特別にブースをとりアピールタイムをもらってしっかり営業をかけています(笑)。おかげさまで、いくつか注文もいただいています。

これまでは、お客様に商品を提供して収益を得ていましたが、これからは、同じスペース、時間でさらに売り上げを伸ばす方法を模索していかなければなりません。レストラン事業において、当社の基本理念である「本物の料理と飲み物の提供」「心のこもったおもてなし」「楽しい雰囲気作り」に基づいた新たなチャレンジを続けていきたいと思います。

 

ビジネスの方向性を変える

-具体的に新ビジネスは決まっていますか?

当社には、すばらしい調理人が数多く在籍しており商品開発を行っているため、これまでにストックされたパスタソースやドレッシングのレシピだけでもすごい数です。最近の談話会で、「当社オリジナルのレシピを商品化してはどうか」という意見が上がりました。まだ検討中ですが、近い将来に具体化したいと思っています。

加えて、デパ地下のように大きなキッチン設備を使わない出店も視野に入れています。

 

店舗を増やすよりも人を育てる

-店舗数の目標はありますか?

私自身、店舗数の目標は特に掲げていません。上場していないので、店舗数の拡大にコミットする必要はないと考えています。レストランは、運営するスタッフがいて初めて成立するものなので、スタッフの成長に合わせて店舗を増やせたら良いと思っています。

店舗数拡大を目的に、無理して出店しても料理の質が落ちるだけですから、今ある土台をより強固にし、より収益を上げる店舗を1つでも多く育てていきたいと思います。

 

-本日はありがとうございました。

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