特集記事【ライナ株式会社 小川 雅弘】商売の知恵は現場で学ぶ。ライナ株式会社社長に聞く起業のあり方

プロフィール

ライナ株式会社 代表取締役 小川 雅弘(おがわ まさひろ)

1981年5月16日生まれ 兵庫県出身

物流ソフトウェア会社でSEを経験の後、大阪での起業を経て東京でライナ株式会社を設立。
クラフトビールから鮮魚まで、多様なジャンルの店舗を20以上展開するほか、醸造コンサルタントなど、飲食に関わるあらゆる業務に携わる。

■企業HP

https://www.lifeart-navi.com/index.html

商売人の家に生まれ、起業は当たり前だった

生まれながらに目指していた起業

ーまずはご出身について教えてください。
僕は兵庫県の城崎という、小さな町に生まれました。
実家は祖父から続く家具屋で、父親の代で二代目、そして僕の兄が三代目として店を継いだので、次男である僕は自由にやらせてもらうことができました(笑)。

ただ、自由にやるとは言え僕も小さい頃から商売を目の当たりにしてきたこともあり、自分で商売をしようという意識はかなり強く持っていました。
実は僕の身の回りにはいわゆるお勤めの人がいなくて、就職して会社で勤め上げるイメージが湧かなかったんです。

なので、大人になったら自分で商売を始めて、それでご飯を食べていくということがごく自然にイメージできていました。
起業してやるぞ!というよりも、ごく自然な流れとして企業に至るものだと思ってたことを覚えています。
あとそもそも、田舎ってそれほど大きな会社もなくて、町の小さなお店同士で社会が形成されていることも、そんな環境が整っていた要因の一つですね。

就職から1年で起業に至ったわけ

ー進学や進路も自分で商売をすることを前提に進めていったのでしょうか。

そうですね、高校卒業にあたって、大阪にある大学へ進学し、学部は商学部を選びました。
自分で商売を始めるなら経済とか、経営の基礎知識をしっかりと勉強しなくちゃと思って入学したのですが、起業らしいことと言えばそれよりも部活動とか、イベントの立ち上げの活動が目立っていたと思います。

入学当初はアイスホッケーやボクシング部といろいろな部を転々としていたのですが、ある時競技スキー部がメンバー不足で廃部になったことを知ったんです。
それで仲の良い友達ともう一度この部を復活させてみようという話になり、僕たちが引退する頃にはかなりの人数が集まる部活動になっていました。

当時はスキーよりもスノーボードが流行っていたので、まずはスノーボードを入り口にいろいろな人に部活へ参加してもらい、とにかく「スキーも面白いよ」という方向性で、スキーに興味を持ってもらうきっかけを作ることに徹底しましたね。

あと、当時としては珍しい、学生が積極的に質問ができるような、逆面接タイプの就活イベントの立ち上げや運営も担っていました。
通常、就活は学生が企業を訪問し、企業が面接のような形で学生を選ぶものがほとんどでしたが、その逆で学生が気兼ねなく企業の人に質問ができるようなイベントは喜ばれるんじゃないかと思ったんです。

結果的にはイベント自体はそれなりにうまくいったものの、収益性の面では期待していたほどの結果が得られなかったので、事業としては成功とは言い難かったですね(笑)。とは言え、何か事業を立ち上げるにあたっての展開とか、どういうプロセスで物事を進めていけば良いのかがこういった活動を通じて得られたので、個人的な成果としては大きかったですね。

ーご自身の進路決定はどのようにされたのでしょうか。

僕はやはり起業が大前提になったので、できるだけ学びの多いところで働ける場所を選ぼうという意識がありました。

最終的に就職先を物流ソフト会社に選んだのですが、これはまずその会社が中小企業であったため、早いうちから自分にそれなりの裁量が与えられるだろうと考えたことがあります。
あと、僕はその会社にSEとして入社したのですが、これは僕が苦手な分野であり、将来起業するなら全部自分でできなければいけないだろうと思ってSE職を選びました。とにかく教育がしっかりしているところで、弱点を補いたかったんです。

わずかな資金を元手に多店舗展開へ

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大阪での成功と失敗から学んだこと

ー大阪での起業は今の会社と関係のないところのものでしょうか。

そうですね。
完全に僕が一人で会社を立ち上げて、ちょうど良い賃貸ビルが見つかったので、そこを借りて飲食業を始めました。

飲食業を選んだ理由としてはそこまで深い理由はなくて、単に参入障壁が低そうで、なおかつキャッシュフローが良さそうだからです。
今思うと23歳の若者らしい、浅はかな考えだったなと思いますが、これが意外とうまくいったんです。

初めはビルの一階でテイクアウトができるカフェを始めて、徐々に集客を増やしていきました。
起業した当初は元手もわずかで、初期投資にかけられるお金に余裕はなかったので、店の切り盛りはもちろん、内装なんかも全部自分でやっていました。
とにかくお金はなくても体力はあったので、大掛かりな作業は友達や大学の後輩に手伝ってもらったりしながら、1年ほどそのお店の経営に集中していました。

業者に頼まず全部自分でやるというのは、骨も折れるし時間もかかるんですが、だからこそ店の仕組みとか、内装についての知識も身につくので、自分でやって得られる収穫も大きかったですね。

3か月ほど経って、今度はそのビルの2階に新しくステーキハウスを立ち上げることにしました。店を経営していくうち、要は飲食店は稼働率を高めていけば良いのだというところにたどり着き、その後も屋上に夏限定のバーベキューガーデンを展開してみたり、2号店を立ち上げたりと順調に成長していきました。

そこで3号店目のオープンにとりかかるぞというところで、物件選びの段階で騙され、詐欺に遭ってしまうんです。
これまで貯めてきたお金を全部持って行かれてしまい、どうにも事業を継続できなくなってしまって、やむなく全ての店をたたむことになってしまいました。
それで25歳の時に東京へ出てきて、今の会社の立ち上げに携わるというのが今に至る経緯です。

そんな大きな失敗をしたこともあり、今でも大きなお金を動かすときは僕が自分で扱うようにしています。
お金は人任せに扱ってはいけないというのが、僕にとっての大きな教訓でしたね。

原価をかけずにお客さんを喜ばせる方法

ー東京には何らかのつながりがあってこられたのでしょうか。

実は僕が大阪で起業をして間もない頃、大学時代の同期に東京の知り合いを紹介してもらって、僕に東京でも飲食事業をやってみないかと声をかけてもらっていたんです。

それで東京に来てから間も無く、今の会社であるライナを立ち上げ、役員の人たちに出資してもらう形で、2回目の立ち上げ後初となるカフェを四谷三丁目にオープンしました。

カフェはもともと僕を誘ってくれた人から頼まれていたために始めた形態ですが、このお店は徐々にワイン食堂へとシフトしていくことになりました。
400万円という少ない資金で始めたお店でしたが、できることを最大限活用して、なんとか軌道に乗せていくことができましたね。

ー400万円で新規店舗を始められるものなのでしょうか。

これは僕が大阪でも経験したことなんですが、内装工事などに業者を使ってしまったり、サービスとはあまり関係のないところへ変にこだわりすぎてしまうと、これくらいの初期投資では一瞬で資金がなくなってしまいます。
なので、お金のかかりやすい内装などは、大阪の時と同様、ひたすら自前で作ることでコストを削減していました。

やってみるとわかるんですが、内装を自分で作るのってそこまで難しいことではなくて、ディテールに目をつぶれば十分にお客さんに喜んでもらう空間を作ることはできます。

流石に職人の目をごまかすことはできないので、みる人がみれば素人の仕事であることはすぐわかると思うのですが、私たちが喜ばせないといけないのは職人ではなく、店に来てくれるお客さんの方なので、内装は自前でも十分事足りるんです。

あと、内装は僕だけでなくオープン後にその店で実際に働くスタッフも手伝ったりすることもあるんですが、そうなると今度はスタッフにも「自分が作った店」ということで愛着を持ってもらうことができます。

店作りを自分が手がけて、お客さんに喜んでもらえるというのはやっぱり嬉しいもので、その分心なしか接客にも身が入るようになります。
弊社の離職率は6%前後と、飲食業回にしてはかなり低い数字をキープできているのですが、お店への愛着もこういった数字に現れているかもしれません。

会社の成長とスタッフの関係

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従業員満足度の高め方

ー従業員の満足度は他にどのような施策で高めてらっしゃるのでしょうか。

私たちもまだまだ模索中というところですが、ひとまずスタッフの負担を少しでも軽減していこうという動きは生まれてきています。

ランチ営業をなくして夜の時間帯に集中できるようにしたり、無駄な会議を減らして、負担軽減に取り組むなど、世の中が求める基準に追いつけるよう、少しづつ改善を進めています。あとは休みを増やしたり、給与面での改善も進んでいますね。

従業員目線でいうともう一つ大切なのが、スタッフにもしっかりとポストを与え、キャリアプランを構築してもらうというところが挙げられます。

上長などのポストをどんどん作っていき、そのポストごとの評価基準を定め、フラットにスタッフを評価できるよう設計することで、従業員のモチベーションアップにつながるようにしています。
飲食業はどうしてもキャリアを構築していくことが難しいので、会社の中に様々なポストを設け、そのポストを目指してお互いに切磋琢磨することで、意欲的な労働環境を構築していくことができます。

あとはポジションがなくても、しっかりと給与アップにつながる評価制度の構築にも意欲的です。
ポジションを作ればそれだけ新しい店舗の出店にも繋がってきますが、基本給を設定し、ポジションがなくとも頑張れる評価制度があれば、スタッフごとにに応じた働きやすい環境を構築することができます。

弊社では色々な施策を試してきましたが、新しい取り組みやポストを作ると同時に、必要になくなったポストや有効性のない施策をどんどん取り払っていくことにも積極的です。せっかく作ったものだからと言って変に丁重に扱ったりせず、それより良いものができればそちらを優先的に採用し、新陳代謝を高めていけるよう取り組んでいます。

あとは現場の仕事は現場スタッフに任せて、そのまま独立できちゃうんじゃないかというくらいの自主性を与えています。
現場の仕事は現場で、それをサポートするのが本部の役割ということで、分担のイメージは考えています。

目標は川上から川下まで

ー顧客満足度の向上についての施策はいかがでしょうか。

やはり、コストパフォーマンスの高さの追求に積極的なところが挙げられると思います。原価率を抑えて良いものを提供することがモットーですが、自社でクラフトビールを醸造することで原価を抑えて、その分安く楽しめるクラフトビールとしてお客さんに還元することができているので、うちの中では人気形態の一つです。

もともとクラフトビールが飲めるお店は醸造前から展開していたのですが、これだけ人気なら自社でもやってみようということで、そのお店からちょっと歩いたところに自社醸造専用のお店を立ち上げました。こちらもおかげさまで多くのお客さんに喜んでいただいています。

あとはどぶろくの醸造も始めていて、理想としては川上から川下まで、飲食に携わるあらゆる事業を自社で行なっていきたいとは考えています。
今の会社規模ではそれはまだ難しいのですが、そのうち実現したいとは思っています。

ー今後の事業展開について、具体的なプランはありますか。
具体的な出店目標みたいなものはあまりなくて、上長のポストを二つ作って、店舗を4つ作ってを毎年のペースで継続できれば良いというくらいでしょうか。
あとは飲食に関連する他の事業についても展開を進めていて、そちらにも力を入れていきたいと思っています。

今力を入れている事業の一つに醸造コンサルティングがあります。
これは弊社の自社クラフトビール醸造から始まった事業なのですが、日本の現行の法律だと、醸造を新たに始めるのには非常に手続きが困難で、1年以上の期間を要してしまうことも珍しくありません。
そこで弊社の方で醸造許可の取得サポートはもちろんのこと、醸造の研修までもバックアップして、ニーズに応じたサポートを提供できるよう体制を整えています。

すでに醸造の研修についてはいくつかの会社から実際に受けていただいており、予約待ちの状態が続いています。
店にいらっしゃってくれるお客さんだけでなく、これからは新規事業の立ち上げを考えている方にも、積極的に弊社を活用していただきたいと思っています。

ー本日はありがとうございました。

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