【株式会社スティルフーズ 鈴木 成和】従来のビジネスモデルに囚われないことで他社との差別化を図る

株式会社スティルフーズ 鈴木成和

プロフィール

株式会社スティルフーズ 代表取締役社長 鈴木 成和

1952年生まれ 千葉県出身

1995年に株式会社スティルフーズを設立。本格的なイタリアンレストランやステーキハウス、ピッツェリア、和食ダイニングなどさまざまな業態を手がけ、イタリアンブーム、熟成肉ブームなどを牽引してきた。
2018年には、日本初上陸のル・ショコラ・アラン・デュカスの東京工房をオープン。
現在は、日本全国に24の店舗を構える。

■企業HP
https://stillfoods.com/

チョコレートショップのビジネスモデルを打ち砕く

ル・ショコラ・アラン・デュカスの工房をオープン

-なぜル・ショコラ・アラン・デュカスの工房を作ろうと思ったのですか?
パリでチョコレートのお店を見て回るうちに、ル・ショコラ・アラン・デュカスのチョコレートが一番魅力的だと感じました。チョコレートにデコレーションをして、色や模様や形やデコレーションなどで訴求している他社に比べて、ル・ショコラ・アラン・デュカスは本当に味と新鮮さで勝負をしています。そう感じて、やってみたいと思いました。

途中で紆余曲折ありながら、最終的にはブランドより「やってみませんか?」と声をかけて頂き実現したのですよ。

実はもともと他社さんで契約がまとまっていたのですが、内部でいろいろとあったようで。後はサインするだけという状態で突然キャンセルになり、当社に声がかかったというわけです。

他社との差別化を図って大ヒット

なぜル・ショコラ・アラン・デュカスのチョコレートが特別かというと、厳選したこだわりの素材を使用することは勿論なのですが、さらに専用の工房を作らないといけないからです。パリでもそうなのですが、ショップの奥には工房がありガラス貼りでチョコレートを作っているところが見えます。

いわゆる「Bean to Bar」という形で、オートマチックに流れ作業で行う工場ではなくて、職人が手作業でチョコレートを製造するのです。

他社の一流チョコレートショップは、出来上がった製品を輸入しています。つまり、パリで作ったものを冷凍し、空輸して日本で解凍して販売するというのが一般的なビジネスモデルなのです。しかし、ル・ショコラ・アラン・デュカスの場合は1から工房を作らないといけないので、先行投資がびっくりするような金額になってしまうんです。

経験がある方に「工房を作ってチョコレートショップをやろうと考えているのだけど」という話をすると、ほぼ100%の方に「やめた方がいい!」と言われました。なぜなら、結局暇な時期にも減価償却費や人員を抱えないといけないから。そういうわけで絶対製品を輸入した方が良いと言われるのです。

しかし日本には、バレンタインデーとホワイトデーという独自の習慣があり、この3ヶ月ほどで年間売上の1/3程度が取れます。バレンタインデーとホワイトデーは20年以上定着していますから、いきなり無くなることはないでしょうし、「まぁいけるかな」と思って出店を決意しました。

そして、ほとんどの百貨店でバレンタインの催事をしますし、地下の食料品売り場には必ず1~2店舗チョコレートショップが入っていますよね。するとお客様から、「ル・ショコラ・アラン・デュカスはいつ出店するんだ」という声がとても多かったそうです。
当社がル・ショコラ・アラン・デュカスのチョコレートを扱うというのを聞いた百貨店のバイヤーから声がかかって、百貨店にもオープンすることとなりました。

最適な時期とは言えない3月でのオープンでしたが、結果的に1~2時間は並ぶという状況が2ヶ月ほど続きました。バレンタインもホワイトデーも終わったタイミングでしたが、日本人はチョコレートのファンが多いのだと改めて感じましたね。

しかし、チョコレートって夏場は全然売れないんですよ。特に日本の夏は高温多湿なので、お客様が持ち帰るのに非常に不安がられます。オープンして2~3ヶ月後には、本当に厳しい状態になりました。
そこで対策としてチョコレート以外の焼き菓子やマカロン、ソフトクリームなど夏場対策を行いました。

あとは、出店場所も大切です。昨年秋に出店した百貨店2店舗と羽田空港の店舗は非常に好調で、夏場もある程度の売上が期待できそうです。

巷にない業態を考えて出店する

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熟成肉ブームの先駆け

-レストラン業態のお話をお聞かせください。
実は熟成肉を始めたのはうちのステーキ屋が最初なのですよ。10年ほど前なのですが、当時はまだ熟成肉を誰も知らないような時代でした。そして、ウルフギャング・ステーキハウスができて、当初はライバルだと思っていたのですが、結局のところお互いに相乗効果で盛り上がって業績が伸びました。

カジュアルな熟成肉専門店も出現し、2~3年前は定着してきたなぁと思ったのですが、現在はブーム自体が終了した感じがありますね。

イタリアンブームを牽引

熟成肉の前はイタリアンが中心でした。
イタリアンブームが起こる3年くらい前に、イタリアで食べるような本場のイタリアンが食べられるお店をお台場に出店しました。例えばパスタはアルデンテでしっかりと塩気がある、という本格的なイタリアンのお店ってほとんど無かったのですよ。
じきにイタリアンブームが巻き起こり、恵比寿にあるイル・ボッカローネと当社がイタリアンブームを牽引していきました。

結局飲食店はどこも、人のまねから入ります。どこに行ってもイタリアンのお店があるようになり、たまたまイタリアンのお店が欲しいというところが出てきたのでまとめて売却することになりました。

「流行りそう」と思って始めたお店は上手くいかない?

-ブームの先駆者になるためにはどうしたらいいのでしょうか?
「これをやったら絶対売れそうだな」と思って作ると逆に上手くいかないものですよ。実際にそれで何度か大失敗しています。

とはいえ、やっぱり何かきっかけがないと新しいことを考えるのは難しいですね。
例えばステーキは、元々ニューヨークが大好きでよく足を運びステーキハウス巡りをしていたのですが、意外と東京にはニューヨークのようなステーキハウスってないなぁと思いついたのですよ。 出店を持ちかけられていた会社さんに「こんなお店どうですか?」と打診をしたら「六本木ヒルズにはピッタリなので是非やってください」ということで決まりました。

また、お台場は「こんなとこ誰も来ないよ」というロケーションだったのですが、オープンエアのテラスがあるカジュアルなお店がたまたま私は好きだったので、「ここにイタリアにあるようなお店を出したら面白いんじゃないか」という発想が浮かび実現させることとなりました。

つまり、「これをやるとウケる」というよりも「巷にないものを考えてやる」「自分の好きなことをやる」と思って始めたほうがヒットするのでしょう。

結局チョコレートもそうじゃないですか。もし当社も他社と同じようにチョコレートを輸入して販売するだけだったら「新しいブランドのチョコレートが日本に初上陸しました。」で終わっていたと思います。やはり、工房を作って製造販売をするというのが大きかったのです。おそらく、今後も出てこないと思いますよ。原価はもちろん輸入した方が高いのですが、先行投資が大きすぎて普通はできませんから。

提供する側の理論で商売をしない

お客様の要望に寄り添う

- 顧客満足度を向上させるための取り組みを教えてください。
提供する側の理論とお客様側の求めるものは違うじゃないですか。商売をする上で、提供する側の理屈を通そうとすると大体うまくいきません。
だから「どうやったらお客様が満足して帰っていただけるのか」というのを考えるのです。

例えば、決まったメニュー以外のものを注文されたとします。提供する側からしたら、メニュー以外のものはできないと思いますし、中には怒るシェフもいるでしょう。しかしお客様からしたら、「材料があればできるでしょう?」と思います。パスタでも、2種類のソースを合わせたら新しいものができるじゃないですか。だから、当社では「対応できるなら対応しましょうよ」というのが根底にあります。

原価率ではなく利益を見る

ワインは昔、売価がとても高かったのをご存知ですか?ホテルでは、3,000円で仕入れたワインをグラスで頼むと一杯1,500円~2,000円もしていました。確かに在庫を抱えるのはお金がかかるのですが、ワインはコルクを抜いてグラスに注げば提供できますよね。

だから、1,000円のワインを3,000円で売ったとしたら、10,000円のワインは12,000円で売っていいのではないかと考えました。つまり、今までのように原価率で考えるのではなくて利益で考えるということ。1,000円のワインも10,000円のワインも保管するスペースは同じですからね。

誰もが知っているようなワインを他社よりも安く出すと、やはり高いワインがよく売れるようになりますし、「あそこのお店に行くと良いワインが安く飲める」と評判になります。それに10,000円の料理に3,000円のワインは合いません。やはり、10,000円の料理にはそれなりに良いワインの方が合うので、そう考えた時にお客様がケチらないでいいようにしたいと思ったのが最初のきっかけですね。

失敗を恐れずやりたいことをやる

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工事費が高騰している中、店舗拡大をする方法

-今後の目標や展望をお聞かせください。
まず、ル・ショコラ・アラン・デュカスを4年で完全に軌道に乗せるということが直近の方針ですね。元々ル・ショコラ・アラン・デュカスは10年契約で、5年のオプションをつけて15年。そこまで完全に続けられるように、毎年決まった利益を出して、評判も保ち、どうやってブランド力を維持するかという道筋をしっかりと作るというのが一番です。

レストランに関しては、工事費が高騰しすぎています。新たに店舗を作るのに5年前の倍かかるのですよ。先日オープンした渋谷のスクランブルスクエアに飲食店街があるのですが、そういった場所はもう母体が大きい会社しか入れません。しかも、あれだけ人が押し寄せても元が取れるか取れないかという状態のようです。

物販は作るキャパが広ければいくらでも売れるのですが、飲食店はホテルや飛行機と一緒で客数が決まっているので、いきなり売り上げが数倍に伸びることはありません。
そのため、いかにローコストで新規出店できるかというのがポイントになってきます。今は潰れるお店も非常に多いので、オープンから3~5年程度の新しいお店を少し改装して出店するような居抜き物件を利用するのがいいですね。

また、当社が今力を入れているのはホテル内のレストランです。現在は客室が200~300の比較的小規模ホテルが主流になっているのですが、そうなるとレストランは1件で賄えます。ホテル業は不動産業のようなもので、フロント業務は自社でやったとしても、部屋の清掃やレストラン業務は外注する場合が多いです。 レストランは内装を作りあとは業務委託でという形が多いので、ホテル側としては儲からないにしても赤字にはならない、レストラン側としては投資がほぼゼロでやり方次第ではしっかり利益が出るので、当社はそちらにシフトしているところです。

-今後の課題をお聞かせください。
3年くらいを目安に、次期社長を選出することが一番の課題ですね。とはいえ、こちらが育てようと思うとある程度育ったところで独立して自分でやっちゃいますから、自分でやりたいと思う人に出て来てもらうしかありません。

当社は、出戻りが非常に多くて、1割以上は一度辞めて戻ってきた人です。特にこの業界は引き抜きが多いですし、どんどん新しいお店がオープンして行くので、人員不足になるのはある程度はやむを得ないと思います。

ただ、当社の幹部は出戻りがほとんどです。引き抜きをするときはみんないい話をしますよね。でも行ってみたら話が違うという感じで結局当社に帰ってくるのですよ。

興味の幅を広げれば好きなものが見つかる

多くの人が色々なことに興味を持っていないと感じます。
年を取れば取るほど、同じ場所に行って、同じものを食べて、同じものを飲むみたいな、安心感を求めるじゃないですか。私自身も1人だと、やっぱり行くお店は決まってしまいますからね。しかし、それでは感覚が古くなります。

私の場合同業者は、男性が30~40代、女性が20~30代が多く若者と接する機会があるので、インスタでお店の紹介を始めたりシーシャを吸ったりと50代以上ではなかなかやっている人が少ないこともしていますよ。また、20歳の息子と服や靴も共有しているのですよ。「お父さん、これいいんじゃない?」と勧められた服を後日息子が着ているなんてことも(笑)

とにかく、文学や音楽、映画、食事、アルコールなど、興味の幅を広げればその中から自分の好きなものが見つかるはずなので、年齢関係なく色々なことに興味を持つことは大切だと思います。

「若者にアドバイスはない」?

-20代30代の今後経営者になるかもしれない若者にアドバイスをお願いします。
ないですね。「自分でやりたいようにやるべき」ということに尽きます。
なぜなら、結局楽をしたいと思っている人は楽をしたいですし、何かやってやろうと思っている人はそれだけのモチベーションを持って仕事をしているから、人から何かをアドバイスされなくても自分で何とかできるのですよ。

ホテルマン時代に、とても良くしてくれたとある議員の方がいたのですが、その方には「大きい会社に入って良い立場にいるんだから、独立する必要はない。なんで食えなくなるような道を選ぶんだ」と言われましたが、多くの人には「鈴木さんだったら何をやってもうまくいくから、絶対に独立した方がいい」と言われました。

また、ある程度資産がある友人は退職後にゴルフを週2~3回して、旅行も頻繁に行くという生活をしているようです。
一方私は、出張先のパリから急遽バルセロナで蕎麦屋を始めた友人に会いに行くということがあったのですが、時間がたっぷりあって有名な所を巡るという旅行よりも、忙しい中で時間を作って休暇を楽しむという方が楽しく感じたりします。
どちらが正しいというわけではないので、自分がやりたいようにやるのが一番いいということです。

20代30代だったら、会社を潰してしまっても何とかなります。独立するくらいの根性があるのならば、新しいところで働いても芽が出るはずです。私は、サラリーマンでもどんな職業でも、成功している自信がありますよ。
だから自信を持ってやりたいことをやったらいいと思います。

-本日はありがとうございました。

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