特集記事【株式会社フォーブス 森 隆】趣味性の追求こそ感動の源。夢酒が考える日本食の伝え方。

株式会社フォーブス 執行役員常務 森 隆

プロフィール

株式会社フォーブス 執行役員常務 SSI酒匠 森 隆(もり たかし)

1966年生まれ 東京都出身

1994年に日本各地の地酒と料理を取り扱う和食居酒屋「日本酒ダイニングバー夢酒」をオープンし、翌年にはホテルウイングインターナショナル内に「美食酒家ゆめぜん」も開店。以降もホテル事業と並行して出店を重ね、日本各地で精力的な展開を進めている。

■企業HP

http://for-bes.com/

ホテル事業と飲食事業が相乗効果を生む理由

人をワクワクさせる仕事をしたい

ー飲食業に着手された理由は何だったのでしょうか。

私は好景気のバブル時代に学生生活を過ごしたものですから、とにかく楽しいことがしたい・夢のある空間を創りたいという気持ちが大きかったんです。その時代の若者らしく、友人と海外に行って見聞を広めたいと思っていました。

20歳のころ、私は世界の最先端の文化を見たいと思い、友人とニューヨーク・サンフランシスコ・ロサンゼルスと、アメリカの大都市へ旅行に出かけました。日本に今ほどファストフードチェーンや大型ショッピングモールが少なかった時代ですから、そのスケールの大きさや華やかさ、アイデアに圧倒されたことを今でも覚えています。

就職を考えるにあたり、その時の感動が忘れられなかったのと、アメリカ発の商業施設・ホテル・飲食店などがどんどん日本に上陸していました。その経験から就職活動をし、1989年、今の会社にご縁をいただき、入社し現在に至っています。

人に驚きを与えられるような仕事をしたいという思いと、アメリカのサービス業態・アイデアは、日本にも独自の形態で拡がっていくと考えていました。

 

日本各地への出張を通じて着想を得る

ー地酒や日本食を扱うレストランの開業にはどのような経緯があったのでしょうか。

地酒や各地の郷土料理に感動した経験が大きいですね。入社後は日本全国を上司とともにホテル開発用地を探しに飛び回っていたのですが、そうすると普段自分ではいかないようなお店に連れて行ってもらったり、地元の方から紹介してもらえたりするんです。
出てくる料理やお酒がまた素晴らしいもので、とても東京では食べられない・飲めないものにたくさん出逢いました。

今でこそ多彩な食事が楽しめる東京ですが、90年代前半は飲食チェーンも今ほど多くなく、食のバリエーションも現在ほどではなかった時代です。地酒専門店もありましたが、頑固そうな親父がやっている専門店というイメージで、みんなが気軽に行けるお店は少なかったことを覚えています。
そんな都会と地方の食文化のギャップに着想し、地方の名物逸品を東京の人にも楽しんでほしい、日本の美味しい心を伝えたいという思いからスタートしたのが、1994年神田にオープンした「日本酒ダイニングバー夢酒」です。
今は2002年開業の銀座「夢酒 みずき」が本店となります。
2003年開業の丸の内「酒蔵レストラン宝」は、主に9県の食材を活かした料理と9蔵元の地酒を、とびきり美味しく、気持ちの良いサービスで提供することをコンセプトに120席の大型店舗にチャレンジし、おかげさまで連日大盛況です。

当初は弊社のホテル事業のアンテナショップとしてスタートさせた飲食店でしたが、これが予想以上に多くのお客様に来店していただくことができ、雑誌やTVでも取り上げてもらうことができたんです。
東京で気軽に地酒を楽しめるお店は当時まだ少なく、地酒を扱うお店で洒落ていて、かつフレンドリーな地酒専門店というのは来店しやすかったのでしょう。今ではクラフトビールを気軽においしく食と一緒に飲めるお店が話題になってますね。

今は地酒のみならず地焼酎もバリエーション豊かです。鹿児島・宮崎・熊本にホテルがあり、東京の店舗でも九州の地焼酎や食材を使う料理は大人気です。鹿児島の焼酎で有名な「宝山」の蔵元へ東京から初めて訪ねたのは、「夢酒」森なんです。

 

25年続けられる飲食業のあり方

株式会社フォーブス 執行役員常務 森 隆2

お客様の満足感動を追求したお酒と料理を提供

ー提供されている食事はどのようなものなのでしょうか。

2018年3月にリニューアルオープンした銀座「夢酒みずき」で人気を博しているのが、ペアリングコースです。
美味しいお酒を提供することはもちろんですが、力を入れたいのは、お酒と料理との素敵な相性。これはワインの世界では以前から行われてきたのですが、コースとして料理と日本酒・焼酎を堪能してもらえるよう、コースメニューに取り入れています。来店されるお客様の4割ほどはペアリングコースを楽しんでいただいており、非常に好評です。
従来の地酒の楽しみ方というのは、銘柄基準で色々な香味を楽しむというものでしたが、私たちが提供しているのは、お料理や食事のシーンに合わせたお酒の楽しみ方です。
バリエーションある料理にベストなタイミングでお酒を提供することで、豊かな時間・美味しい感動体験を楽しんでいただいています。
デザートにもお酒をペアリングさせて提供しますが、お酒が飲めない方や日本酒に馴染みのない方にも楽しんでいただけるよう、ノンアルコールカクテルや果実酒など他の酒類も提供しています。

「酒蔵レストラン宝」では、9蔵元の日本酒を同時に堪能できる利き酒セットも大好評です。9種類同時に堪能できる利き酒セットはなかなかありません。
お酒を提供する際のお猪口も、各酒蔵で使われているものですので、ビジュアルも楽しんでいただけるのがポイントですね。インスタ映えしています。

 

ー料理については、どのようにメニュー作りを行っているのでしょうか。

各地で収穫される旬の食材を用いた料理や、人とのつながりを通じて得られた独自のルートで仕入れた食材などをふんだんに使用しています。

例えば当店人気一番メニューのカニ肉たっぷりコロッケですが、カニコロッケなのにクリームが入っていないのが特色なんです。食べた方は皆さん驚いてくださいます。原価率も高めに設定していて、満足度の高い商品のひとつです。実はこれも北海道のホテルの仕入れ業者の方の協力によって商品化出来ました。鹿児島の黒豚料理も、「宝山」が鹿児島で黒豚を育て始めたということもあって、商品化しています。メニューの一つ一つにストーリーがあるのも、お客様に楽しんでいただける要因の一つだと思います。

カニクリームコロッケ 株式会社フォーブス

 

 

「交流」に重きを置いたイベント設計

94年にオープンということは、25年以上飲食業を続けられていることになりますね。

堅実ですが、永く続けられていることに感謝しています。地方の蔵元の方をはじめとする様々な人たちとの交流があってこそなんです。毎月開催の宝オフィシャルパートナーの9蔵元のイベントは、活気あふれる交流の機会をいただいています。
お酒を飲む機会というのは接待であったり、知り合い同士で楽しむための場であることがほとんどなので、趣向が同じ方々が集まれるイベントは出逢いの楽しみも格別です。
お酒について学びを深めるセミナーも開催し、多くの人たちに酒文化・地域性などを学んでいただきながら、新たなネットワークが拡がることは嬉しいですね。
「夢酒」という店名の由来も、お酒と料理を楽しむだけでなく、夢を語る酒場であってほしいという願いからつけられたものなので、交流の機会を設けることもサービスの一環と言えます。
このイベントは店をオープンしたときからずっと開催しているので、25年も続いていることになります。イベントもいくつかバリエーションがあって、七夕イベント・ひやおろしイベント等も、永く続いています。

世界中で活躍されている、酒コンサルタントのジョン・ゴンドナーさんというアメリカ人がいらっしゃるんですが、彼は日本酒の伝道師として、外国人向けの酒プロフェッショナルセミナーを開催していて、宝が酒ディナー会場になっています。
彼は「カンパイ!」というハリウッドの日本酒ドキュメンタリー映画に出演しています。
実は私と宝・夢酒も少しだけ出演しています。ぜひDVDをご覧になってください。

実のところ、年々日本にある酒蔵の数は減っていて、かつては1990年代に3000あった酒蔵も、今では1000蔵ほどと言われています。これは後継ぎが見つからないことや、単に日本酒の消費が落ち込んでいるということなど、色々な要因が考えられます。
しかし私自身は日本酒の未来については悲観ばかりではありません。希望があります。
日本酒はここ10年で目覚ましい進化を遂げていて、今までになかった個性派のお酒も登場し始めています。若い後継者たちが農大へ通って研究に励んだり、フランスでワインの勉強をしたりして、日本酒に携わる人の感性・技能も多様になっています。焼酎蔵も同様です。

ロンドンで世界コンテストが開かれたりもしています。世界から日本の酒が大注目です。
日本の飲食文化のグローバル化が進んでいることも事実なんです。

 

感動を産むためにできること

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優れたスタッフが集まる理由

ーこれだけのクオリティを維持できるスタッフの方も優秀であるようにお見受けします。

ありがとうございます。スタッフを評価頂けることが何よりの喜びです。当初は私が自ら全国を回ってお酒を選んだりしていたものですが、今はスタッフが優秀で好奇心あふれ、私がお酒を選ぶこともめっきり少なくなりました。頼もしい限りです。

「夢酒みずき」では、日本酒と焼酎セレクトは、24歳の女性スタッフ2人がそれぞれ主に担当しているのですが、蔵元や料理長と直接話し合い、その時々で料理に合う最適の一本を、自らの感性で選んでいます。若い社員たちが主体的にお酒について学び、日々熱心に取り組んでくれていることが、お客様にストーリーと共に美味しさが感動レベルで伝わるのです。

 

ー社員教育はどのように行なっているのでしょうか。

先輩の良いところを自ら吸収してもらうことにあると思います。銀座「夢酒みずき」の店長は、4年間福島の酒蔵で修行を積んだのち、飲食の店舗で実践している実力派のスタッフです。
彼らが後輩のお手本となり、基本業務を指導し、スタッフが積極的に吸収できる環境をつくり、考動し、日々の仕事に活かしながら成長しています。

特に弊社の店舗に興味を持って入社する人たちはお酒を学びたいと思っている意欲的な人が多く、店の個性・趣味性が、そのまま採用にも良い影響を与えています。バイタリティのある人がたくさん集まっていて、自ら蔵元まで赴いて田植えや稲刈り、酒づくりを手伝ったり、芋切り作業・産地の環境・食文化を体験してくる人も多いんです。「自分の感動体験をお客様に伝えたい」という、好循環が生まれています。

わが社のモットーとして、一、熱意 情熱 二、スピード、三、感性を据えています。
この三つを備えた社員が店舗で活躍してくれていますし、スタッフが育つ環境・機会を創っていくのが、私や会社、社員たちの使命だと思っています。

もちろん私たちは企業の継続的な成長を考えるのは大前提です。働き方改革には意欲的に取り組み、社員スタッフの成長も同時に達成しながら、働き甲斐のある・わくわく考動できる店舗運営に全力を注いでいます。

 

趣味性の追求・好奇心が、感動体験につながる

ーお店に魅力を感じてもらうために実施している施策はありますか。

ペアリングコースや利き酒セットもそうなんですが、提供するサービスの趣味性を高めていくことは重視している点です。
趣味と呼ばれるものはなんでも好奇心を持ち、深く知ることで、その楽しさ・価値に気づくものですが、夢酒ではお酒の楽しみ方を増やす機会を提供することで、来店されたお客様に、より深くお酒の世界に親しんでもらえるような取り組みに力を入れています。
常連の方にはマイお猪口をキープして頂いたり、新メニューをご試食・評価頂いたりと、名誉顧問としてアドバイザーになって頂いています。
各自が趣味性を突き詰めることで、お客様に感動体験を届けることができるようになるんです。

各店舗の自主的なサービス施策もお客様には喜んでいただいてます。例えば予約で来られる方や常連の方にメッセージカードをお作りして、スタッフとお客様のコミュニケーションに役立っています。こういった施策はホテルサービス文化に近いものがあります。ホテル事業と飲食事業の融合は弊社の企業文化の一つです。
直筆でメッセージカードを書くなんて、そこまで手間暇をかける必要はあるのかと思われるかもしれませんが、やはり手づくりの心くばりは、お客様に喜んでもらえますし、メッセージが伝わることが、スタッフにとって一番嬉しい瞬間です。

お客様には、様々な方がいらっしゃいますが、多様な方たちに夢酒グループの提供した商品・サービス・心くばりを目の前で喜んでいただけることが、飲食業の素晴らしさであると思います。

これからも「評判のいい店 日本一」を目指してより良い人創り・店創りを追求してまいります。

ー本日はありがとうございました。

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