特集記事【株式会社TGK 安藤 隼人】オムライスのファーストフード化を目指して。作りたてを届ける「神田たまごけん」が成長した理由

株式会社TGK 神田たまごけん 安藤隼人

プロフィール

株式会社TGK  代表取締役 安藤 隼人

1980年生まれ 東京都出身

アミューズメント会社の飲食部門を数年間勤めたのち、オムライス専門店である「神田たまごけん」を2007年にオープン。

現在は直営5店舗、FC5店舗の10店舗を展開しており、関東地域を出て京都や福岡と、西日本地域にも意欲的な出店を見せている。

■企業HP

http://www.tamagoken.com

 

気軽に食べられるオムライス屋さん

「なんとなくあったらいいな」から始まった神田店

ーまず、1号店オープンの経緯から教えてください。

「たまごけん」の前はサラリーマンをやっていたのですが、25歳の時に神田でオムライス専門店をオープンしました。路地裏の小さいお店で、当時は本当にノープランでしたね。そもそもこのオムライス屋も「気軽にオムライスが食べられる店があったらいいな」ぐらいのモチベーションで始めたものだったので、まさかフランチャイズ展開をすることになるとは思ってもなかったです。

あと、特別自分の中で独立に憧れているわけでもなかったので、強い起業家精神があったわけでもなかったと思います。できたらいいな、銀行からお金を借りられたら始めようかな、くらいの意気込みでした。

店を立ち上げる時に1500万円ほどの費用が必要になったんですが、今思うと、この金額は一から個人で独立する店としては、かなりかかっている方ですよね。これも別に目的があってそうしたわけではなくて、見積もってみるとこれくらいの金額になったから、その通りにしただけという感じです。長期的な展望もなかったですね。

 

池袋店から風向きが変わる

ーオープン当時の客足はどうでしたか。

やっぱり最初の2,3年は少し苦労しました。お金を銀行から借りることはできたんですが、売り上げはすぐにお金を返すのに使って、また借りてを繰り返しながら営業していました。いわゆる自転車操業ですね。

ただ、だからと言ってそこまで焦っていたわけでもなければ、金銭的にとても困窮していたわけではなかったので、一般的に持たれているイメージほど大変なものではなかったと思います。

神田という立地上、基本的なターゲットはサラリーマンの人たちで、昼間ランチを食べて、たまに夜ご飯に食べていってくれるようなお客さんです。オフィス街なので日曜はお休みをいただいていました。自転車操業とはいえ週1日はしっかり休んで、年末年始などの長期連休に旅行へ行ったりするくらいの余裕はあったりしました(笑)

さっきも言ったように、もともとは銀行からお金借りられたら始めようくらいのゆるいモチベーションだったのと、万が一店が傾いてしまっても、またサラリーマンに戻ればいいやという心の余裕もあったので、必要以上に焦ったことはなかったと思います。

とはいえ銀行にお金を返すだけの状況ではいつ経営が頓挫してしまってもおかしくないので、店を有効活用するための施策は色々と打っていました。

神田はオフィス街なので、お昼はそこそこにお客さんが来てくれても、夜はみんな居酒屋などお酒のある場所に繰り出していってしまうので、うちのお店ではその時間を有効に活用する手段が必要でした。なので、バイトで来てくれていた大学生の子のサークルのイベントに使ってもらったり、知り合いに貸し切って使ってもらったりしていました。

これが意外と功を奏して、月に10件くらい入ることもあって、売り上げに繋がってました。それでもやっぱりオムライス屋としての売り上げは芳しくなくて、次の一手として池袋に2店舗目をオープンしました。

 

ー苦しい中でのオープンということに、リスクは感じませんでしたか。

そうですね、どちらかというとメニューやサービスよりも、神田店は出店場所に問題があるということは薄々感じていたので、池袋で試してみたいという思いから始めました。

で、この出店が思っていた以上に売り上げを伸ばしてくれて、大成功となってくれました。今でも売り上げナンバーワンのお店がこの池袋店で、出店した年からずっと売り上げを伸ばし続けてくれています。

あと、現在はこの池袋店が事実上の1号店になっています。神田店はその後も売り上げが伸びず、利益が出るか出ないかをいつもさまよっていたので、今は畳んでしまっています。店を閉めたのは2011年なんですが、その年は東日本大震災もあって、都内も人が閑散としてしまっていました。閉店もそれがきっかけで、3月の震災から三ヶ月後の6月には店を閉めています。

 

街のオムライス屋がフランチャイズ展開に至るまで

株式会社TGK 神田たまごけん 安藤隼人 2

オムライスをファストフードに

ー池袋もランチ営業が好調なんでしょうか。

そうです。もともと「たまごけん」ではファストフードとして楽しめるオムライスをコンセプトにしていたところもあって、池袋はまさにその方向性がぴったり噛み合ったことが売り上げに繋がっていると思います。

神田のお店にはハンバーガーショップや牛丼屋といったファストフード店ほどのスピード感を得ることができず、望まずして違う方向性の営業を行っていたということもありました。なので、池袋で考えていたような展開ができたのは大きな一歩になっていると思います。

 

ー池袋店開店時も安藤さんが店に入られていたんでしょうか。

実は池袋店の方は、開店時からほぼ完全にスタッフに任せていました。神田時代からパートで働いてくれている子で、フルタイムで入ってくれるようにお願いして、店長として切り盛りしてもらいました。

私の方はというと、池袋店開店後もしばらくは神田の方を担当していました。神田の方にも常連のお客さんがついてくれていて、こちらは回転率よりも慣れた接客をサービスする必要があったので、どうしても他の人には任せにくかったんです。

しかし前述したように神田店は閉めて、2015年に2店舗目となる秋葉原店を開けました。

秋葉原もそこそこに売り上げは好調で、池袋店ほどではないですが、高い回転率です。最近では海外からのお客さんも増えていて、客層も多様になってきたところがあります。忙しい時はリピーターさんの方も入れなくなってしまうほどで、新規のお客さんはどんどん増えている印象がありますね。

メインのお客さんは20~30代の男女ですが、中高年のお客さんがいらっしゃることもあります。やっぱり男性のお客さんが気軽にふらっと入れるオムライス屋は少ないので、ファストフードの色が強い「たまごけん」だと、そういったお客さんに日々のランチルーティンに組み込んでもらうことができますね。夕方や夜の仕事終わりに寄って、サクッと食べて帰るという使い方をされているお客さんもいらっしゃいます。

 

フランチャイズ展開のきっかけ

ー直営ではなく、フランチャイズ展開を始めたきっかけを教えてください。

実はフランチャイズ展開も半ば思いつきだったところがあります。多店舗経営が軌道に乗ってきた頃からコンサルの人と話す機会も増えてきていて、フランチャイズの話もよく聞いていたので、それでお店が増えるならやってみようかと思って始めました。実際、フランチャイズのノウハウ提供や加盟店の募集などはすべてコンサルの人がセッティングしてくれて、スムーズに加盟者を募ることができました。

最初はFC募集の広告も、掲載サイトの一番安いプランで出していました。ああいったサービスはかなりコストがかさんでしまうので結構ネックになるかなと思ったんですが、スムーズに3店舗ほど決めることができました。

おそらくなんですが、オムライスのフランチャイズ募集が珍しかったことも功を奏していると思います。今は広告出稿も控えているんですが、ホームページからの問い合わせも増えています。SEO対策を行っているからということもあるのかもしれませんが、オムライスでフランチャイズ展開をしているお店が少ないことも要因としてあるんじゃないでしょうか。あとは加盟金もいただいていないのも大きいと思います。

 

ー直営店舗の数も少しづつ増えていますね。

そうですね、やはりいい場所に出店できるかどうかはタイミングの問題もあるので、チャンスは常に伺っています。直営店だとすばやく場所を抑えることができるので、現状はフランチャイズと同じくらいの規模で展開しています。

今はオフィス街や住宅街よりも、たまごけんと相性の良い繁華街で出店できる場所をメインで探しています。

 

フランチャイズを円滑に進めていくために

ーフランチャイズをきっかけに変わったことはありますか。

新しいチャレンジはいくつも増えました。まずは研修マニュアルの充実です。マニュアルは現在動画コンテンツの拡充が進んでいて、研修の際に映像とともにわかりやすく技術を学ぶことができます。

そもそも、「たまごけん」の場合はかなり調理が簡略化されているので、高いクオリティのできたてのオムライスを経験の浅いスタッフでも提供できるよう、仕組み化が進んでいます。ソースもセントラルキッチンから運ぶ形式を採用しているので、店頭では温めるだけです。

チキンライスの調理も半自動で行っています。一度に10人前のライスを調理するのは体力も技術も必要なので、こういった器具の導入は大きな手助けとなっています。半自動と言っても、その場で炒めているので手作り出来立ての味を全店で提供することができるんです。

ただ中にはライスを炒めるのが楽しいというスタッフもいて、実際にスキルもあるので、自分の手でライスを炒めていることもあるんですよ。

全店できたてのオムライスを提供するというこだわりは、時にネックとなることもありますが、そこの兼ね合いをうまく調節していくことが常に課題ですね。

 

毎日食べられるオムライスの秘訣

株式会社TGK 神田たまごけん 安藤隼人3

飽きのこないオムライスとは

ー顧客満足度の向上のためにされていることはありますか。

リピーター確保のための施策としては、1つに無料券の配布がありますね。次回来店時に大盛りか、チーズトッピング無料を毎回もらうことができるという、おなじみのチケットです。

あとはそもそもの単価が安いというのもあります。単品の値段もそうですが、たまごけんはピクルスとスープのセットで1000円を超えない価格設定になっているので、日常使いにも活用してもらえます。卓に設置している食べ放題のピクルスも、密かにファンを集めています。

洋食屋さんやファミレスのオムライスはいかんせん単価が高くなってしまうので毎日は食べられませんが、たまごけんなら食べられる、というのが強みです。

 

ー毎日食べても飽きない味の秘密はなんでしょうか。

それはずばり、あっさりとした味付けにあると思います。一般的にチキンライスを卵で包んだオムライスは、バターがしっかり効いていることもあって、どうしても味付けが濃くなってしまいます。元々はハレの日などに時折食べるものなので、それがダメだというわけではありません。ただ、毎日食べられるオムライスとなると、するすると食べられるような味付けにする必要があったのです。

あとオムライスは単品料理なので、メニューのバリエーションやソースの種類も増やすなどして、料理として飽きがこないようにも工夫を凝らしています。特に今課題となっているフードコートの店舗ではメニューのバリエーションをさらに拡充し、様子を伺っているところです。

品質に関しては、定期的に覆面調査も導入して、クオリティの確認も行っています。あとは月に1度の社員面談も行なっていて、パートのスタッフにもコミット率の高い人には2ヶ月に一度、同じく面談を行います。私が店頭に立つのは月の1/3程度にし、今はこういった業務に注力していますね。

 

日本一のオムライス屋を目指して

ー現状の課題と、今後の展開について教えてください。

課題としては、やはり新しい形式となるフードコート店舗の収支の安定ですね。改善点はいくつもあると思うので、1つづつ見直していきたいと思っています。あと、直営店舗の売り上げ拡大ももちろん力を入れています。

創業当時こそ「なんとなく」から始まってはいますが、今では日本一のオムライス屋を目指すブランドになっています。券売機のメニューが見辛いなど、小さな改善点はいくつもあるだけでなく、価格の問題は常につきまとっています。このあたりも含め、お客さんの心に刺さる施策を打ち出していきたいですね。

 

-本日はありがとうございました。

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