特集記事【株式会社シェアハピネス 白根 智彦】サードプレイスの少し先。みんなで飲んで「輪」ができる、コミュニティを作る

プロフィール

株式会社シェアハピネス 代表取締役 白根智彦

1965年1月19日生まれ 埼玉県出身

「”Love Foods = 食べ物を愛し、尊ぶ”こと」、「“Support = 他者支援”」を企業理念に掲げ、ビストロ「ぶーみんVinum」を始めとして3店舗を展開する。

本格的なワインとフードを提供する店舗を経営する傍ら、ハンバーガー研究家として書籍を出版するなど多方面で活躍中。

■企業HP
https://yes-rose.com/

テニス漬けだった学生時代。井上恵次氏との出会いが人生を変えた

ー子どもの頃や学生時代のお話を聞かせてください。

生まれたのは埼玉県です。中学から軟式テニスを始めて、高校でインターハイに出場しました。大学は学習院に行きましたが、ずっとテニスしかしてなかったという感じですね。就職の時期にベンチャーが流行っていたんですよ。

今はもう当たり前ですけど、当時起業する人はほとんどいませんでした。ベッカーズは起業に近いスタイルで、「起業者求む」と書いてあったので入りました。当時ロイヤルの副社長だった井上恵次氏がやっていたのが飲食の会社だっただけで、飲食業界に入ろうと思って入ったわけではないですね。

井上恵次氏は「今も神さまみたいな人」

ー井上恵次氏からは大きな影響を受けたのでしょうか。

井上恵次氏は今も神さまみたいな人なんです。「マックをやっつけよう」というのがクレイジーで、ソフトバンクの孫さんやその流れを汲む人たちの元祖のような存在ですよね。ものすごく大きなビジョンを持っていると思います。

「30年後に世界一になる」と言っていたんですよ。今でこそ世界を変えるといってもいろいろな世界があるから「その世界」ではできるけど、当時は世界は一つしかないから、「すごいビジョンだな」と思いました。

そこでハンバーガーを始めて、2年目くらいで商品開発に行きました。ネットもなかったので、調べ物も図書館に行ったりしていましたね。同時に、資格をとるのが好きになってきたので、毎年何かしらの資格をとっていました。

「全体像を捉える」というスタイル

ー資格の勉強が楽しいと感じていたのでしょうか。

物の成り立ちを知ることが好きで、プロじゃないのに「プロみたいになろう」という気持ちで勉強しましたね。ドラクエの「モシャス」(相手の姿を真似る呪文)のような感じです。「どうやったらプロの骨格を掴めるのか」といった気持ちで勉強しました。これが「全体を捉える」という今のスタイルにつながっていると思います。

商品開発では、メニュー開発や業態開発をやっていました。今でも自分で運営することがスタートではないので、すぐ「次に何をするか」を考えてしまいます。座ってるよりも、新しいものを作っていくのが性に合っているんですね。地に足をつけて経営していくのが下手くそなのかもしれません(笑)

ワイン好きの開発仲間が集まってできた店だから、クオリティが高い

株式会社シェアハピネス 代表取締役 白根智彦8ーでもお店の質はすごく高いですよね。

店の質はいいんです。ワインと豚肉が好きな、外食企業の開発仲間が集まった会社だからクオリティは高い。味でいえば、新富の店は食べログの評価が3.6になっています。遊びじゃここまでいかないんですよね。3.5以上は非常にハードルが高いんです。

その反面営業がいなくて、ドラクエのパーティでいうと戦士だけしかいない状態でした。僧侶も魔法使いもいなかったので以前はアンバランスな感じだったんです。

ハンバーガーとの出会い

ーワインのお店と並行してハンバーガーにも携わっていらっしゃいますが、そちらは何かきっかけがあったのでしょうか。

新卒でベッカーズに入社したことがきっかけです。当時ベッカーズは駆け出しのチェーンでしたが、後になってJRに買収されてカフェや回転寿司、カレー、蕎麦屋などいろいろな業態を扱っていました。それが今のベースになっていますね。色々なことができて、最後にはプロデューサーみたいな形で、店を創作する中で「どういうものを作るか」ということをやっていました。

店をやるのが好きで、「自分でやろう」と思って独立したわけではないという点では他の人と違うのかもしれません。企業から入っていて、企業の中でチェーンストア理論を学んで世に出ていくという流れがあります。それがマネタイズにつながるかというと難しくて、パトロンとかそういった形で集中できる環境が必要かもしれません。

実は僕、本業はバーガー研究家で、アルバイトで店をやってるんです(笑)仲間で株を持ち合っているから、責任は負っているけど「オーナー」っていうつもりもないんです。だからバーガー研究家が本業と言っています。

ー飲食コンサルの仕事もされていますね。

イエローズっていう会社があって、そっちは飲食の立ち上げやメニュー開発をやっています。そこは自分が料理をして「こうだ」というスタイルではなく、あくまでもプランニングが主軸です。

今はJR東日本と一緒に来年の6月くらいにできるアメリカンダイナーのメニュープロデュースをやっています。そっち(コンサル)の方が合っているかな…凝り性だけど飽きっぽいんですよ、B型だからですかね。

ミッションはハンバーガーを文化にすること

ー「多動力」を持っていらっしゃるイメージです。

ホリエモンの「多動力」ってありですよね。いいと思います。変わった発言はするけど、間違ってない。それでいうと本も出しています。(『ハンバーガーの発想と組み立て』)プロ向けなので、一般の人に向けてではないですが。

変な話、ハンバーガーって誰でもできちゃうんですよ。そうすると文化としてなかなか認められないんです。これだけハンバーガーってみんなが食べているのに、ミシュランにハンバーガーのカテゴリーはありません。よく考えると、高いハンバーガー屋として知名度が高いところはあっても「おいしいハンバーガー屋」の代表店って知らないじゃないですか。

文化として成り立ってないハンバーガーを文化にしようというのがミッションです。

往年からおにぎりがあって、3〜4年前にラーメンができました。これらは文化になっているわけですよ、ラーメンの中に日本そばを入れるわけではないし。でもハンバーガーは定義がはっきりしていないので、世の中の認知度をレベルアップさせて文化にしようと思って本ができたんです。

日本だからできるハンバーガーの文化がある

ーたしかに、ハンバーガーについて深く知っている人は少ない気がします。本を出そうと思ったのは?

ヤマケンさんっていう肉のすごい人がいるんですよ。(山本謙治氏 農畜産物流通コンサルタント&農と食のジャーナリスト)ヤマケンさんの事務所でプロデュースしてもらって出版となりました。

今までハンバーガーの紹介っていうのは「ここの店がおいしいよ」とか、「この店のチーズバーガーはチーズがどひゃっとなってて〜とか」表面的なところばっかりだったんですよね。僕は文化を知って欲しいので、違ったところを紹介しています。

ハンガーガーには「ビルド」という、積み上がってる順番があって、この順番によって味が変わるんです。口の中にパンが始めに入ってきて、肉に到達する。そうゆう文化的な部分、科学的な部分を大切にしているので、単純に店の紹介だったら僕じゃない方がいい。

日本人は三角食べができるじゃないですか。ご飯を一口食べて、味噌汁を飲んでというものですが、これは外国にはあまりないんです。肉なら肉、スープならスープですよね。日本人は口中調理ができるので、そういった意味でもパンと肉とが合わさった味が理解できます。

おいしさを追求すると「これが完成形だから、これを食べてくれ」という世界を表現しなくてはいけませんが、日本ではそれができます。日本人だからこそわかる文化があるので、ハンバーガーもそうしたいですね。

やるなら「命をかけて」やらないといけない

ーハンバーガーに日本で一番詳しいのは社長なのではないでしょうか。

そうでもないですよ。詳しい部分が文化やいろいろな部分で、プロデュースや工程整理、全体を見渡せるのが自分なだけです。店の詳しさで言ったらブロガーや、毎日店に食べに行ってインスタにあげている人の方が詳しいですし、食べている量が半端ないです。

僕はそういった部分は優秀な人に聞けばいいと思っています。良い関係でいれば、自分だけで全部詳しくなろうとしなくてもいいんです。自分が毎日店に行ってチェックする必要はない。

詳しい部分でいうと、レタスにしても個店の方が八百屋から仕入れるのに対して、会社だったら野菜を扱う会社から仕入れて、カットレタスにして、この時期はこの産地で〜と決めます。それを知ったうえで八百屋から買うという選択肢をとることもあります。

ー社長の3つのお店では、ハンバーガーは扱わないのでしょうか。

店は裏銀座でやっていて、ワインが好きな仲間で作っているので凝っています。値段は高いけど美味しいですよ、本当に。

ハンバーガーは出していません。ハンバーガーは自分でやるとしたら「本物」をやらなきゃいけないので、命をかけてやらないといけない。あと、グルメバーガーという定義の一つに「店主が自分で作ってる」ということを入れているんです。肉の状況は毎日違うので「今日のベストが”これ”」と、魂を込めて作るものとしています。

『グランメゾントーキョー』というドラマの中で、店にいたスパイが他店にレシピを渡してしまうんです。珠玉のレシピを。でも、真似して作っても全然できない。そういった世界なんですよね。パッと見て作れるものではないんです。

ー社長がハンバーガー屋さん出したらすごそうですね。

ハンバーガーだけで成り立つかというと成り立たないんですよね。アメリカンダイナーの中の1商品としてなら成り立つかもしれません。

なぜマクドナルドがポテトのセットをおすすめするのかといったら、ポテトとドリンクで帳尻を合わせているんです。自分の1店だけでミッションとしてやるならありだけど、ビジネスにしようとするとハンバーガーは難しいのが正直な話ですね。

業界へ恩返ししたいという想い

株式会社シェアハピネス 代表取締役 白根智彦4

ーどうビジネスとして成立させていくかが難しいところなんですね。そういった、企業目線でグルメバーガーに携わっている方は少なそうですが。

30年くらいハンバーガーに関わってきたので、業界に恩返しをしたいなと思っています。それだけ長く関わっている人間は少ないんです。
グルメバーガー店でやっている人は個店で育っているので、社会の仕組み、物流の仕組みとかを知らない人が多いです。僕は逆に企業から入っていて、グルメバーガーの世界にも入っている。両方をやっている人っていう人はそれほどいないんです。

ー社員教育はどのようにされていますか。

教育はしないんですよ。やっていく中で「もっとこうゆうものをやっていこう」とか、一緒にやりながら自分も育っていくという感じです。上から見ているつもりもないし、店の営業について玄人でもないから、一緒に探りながら考えていきます。ラグビーで言うと監督っていうよりキャプテンっていう感じですね。

3月に大きな店を1個閉めました。商業施設の中にあった店舗を更新せず、6年の定期契約が満了という形です。3店舗が2店舗になったので従業員が余っていたのと、なかなか良い人材がとれないので定期採用をしようと新卒採用もしたので、店は閉まるわ新しい店はできないわで、人が溢れちゃったんです。

今、1つ新しい店舗(5号店)ができましたが、まだその状況は続いてますね。「あんまりうまくいってなかったな」というのがあります(笑)

店舗が目指すのはサードプレイスの少し先

ー経営者視点で、顧客満足度を上げるためにやっていることはありますか。

お客様と話すことを大切にしています。この店では「スナッキー」という言葉を使っていて、スナックのようなアナログな世界観ですね。ワインを飲んでもらうときにお客様と積極的に話す。それがワインの話じゃなくても、セールスにつながらなくても、サードプレイス・拠り所を作ることを大切にしています。

これからの時代、こういうつながりになっていくんじゃないかなと思います。歌を歌ったりショーをするわけではなくて、人と人との話し合いやお客さん同士の接点を作るというところですね。プロダクトだけにこだわってもしょうがないんです。ワインを飲みたいだけならサイゼリヤでも飲めますしね。

みんなで飲んで「輪」ができる場所を作りたい

ー仕組みや料理など、リピート率アップのために行なっていることはありますか。

常に新しいワインやメニューを提案・啓蒙したり、お客さんが好きなワインを知っておくというのもありますが、「ここにくれば新しいものがある」とワクワクさせることが重要だと思っています。そうでないお客様には「話にくる」といった感じでもいいし。良いものを置いているという前提で、ショットバーではなくて、みんなで飲んで「輪」ができる、コミュニティを作ることをしたいと思っています。

サードプレイスは「自分と違うものを求めにいく場所」のことですが、サードプレイスの少し先のような、「何があるわけでもないけど行きたくなる」という場所にしたいですね。

メインプレイヤーとして何かをやりたい

ー今後の人生ビジョンを教えてください。

もう一度、自分を中心に何かをやっていきたいと思っています。プロデューサーではなく、自分がメインプレイヤーとして、何かはわからないけど自分がナンバーワンの部分でやりたいと思います。

テレビでも有名な賛否両論という和食店は18席しかないんです。マスターの笠原さんが「何かあって全部従業員がやめたとしても、自分一人でできるのが18席」と仰っていて、それにすごく共感したんですね。具体的に何かはまだ定まってないませんが、これから半年かけて探そうと思っています。

ー本日はありがとうございました。

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